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*短編
2

会長が一実に惚れたのは、王道の横に居る平凡腐男子とのふれあいから…ではなく、僕と居る一実と会話してから、だった。会長が一実に惚れてから、僕は嫌々ながらも手伝ってやった。
偶然を装い会わせてやったり、一実曰く王道転校生とやらに俺様な態度で会うよう助言してやったり。



とにかく僕は現在進行形で彼の恋路を手伝ってやっているのだ。感謝される義理はあれど、睨まれる謂われはない。

「え、ちょ、りっつんと会長様が見つめ合っている、だと…!?もしや王道脇!?王道脇で会長様×副会長が繰り広げられてんの!?けしからんもっとやれ!」
「一実、本気で死んで」

宥めるような表情を作りながらも、口では本音を言う。まわりには聞こえていないから、きっと「あんなバカすら優しく宥められて、副会長様お優しい」と思われていることだろう。

「腹黒王子様はぁはぁ!!」

…マジでキモい。
会長はなんでこんな奴が好きなんだろう。気が知れないっていうか、もう寧ろ気が触れてるとしか思えない。

「いっ…糸島、うるせぇんだよ。少し黙って食え。そ、れともその口、塞いでほしいのか?」

大根。

僕がこっそり送ったメールを顔を真っ赤にして棒読みする会長に内心舌打ちする。
俺様セリフとやらが言えないから台本用意しろと言う割に、このダメ会長は棒読みなのだ。これではいくらこの僕が手伝ってやっても意味がない。

「なんて素敵な俺様っ…!この糸島一実、不覚にもときめいてしまった!だがしかし、そういうセリフは王道くんに言うべきなんですよ会長!俺様会長様!」
「……っ」

ごめん、前言撤回。これで意味あるバカ居たわ。

ていうか、一実。そいつ俺様じゃないから。ただのヘタレだから。

そんな事実、会長の恋を手伝ってやっている以上言うわけにもいかず、僕はここのところフラストレーションを溜める毎日だ。
誰か僕の気持ちわかってくれる人、いないかな…。

「大変だな、律も…」
「黙れベタ毬藻」
「…………」

本当に、居てくれたらいいのに。


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