*短編
1
「友永、お前編入生の迎えに行ってやれ」
ええ!?ヤだよ知らない人に会うのなんか!初対面で案内なんてどうしていいかわからないもん!僕口下手だから編入生も気まずいだろうし、だいたいなんで僕なの!?書記とか暇そうに寝てるじゃん!あっちに頼んでよ!僕は知らない人に会いに行くなんて絶対嫌だからね!!
「………はい」
どうも、そんなことは絶対言えないチキンてす。
…泣いていいですか。
僕は元来人見知りである。極度のってほどではないが、かなりの。親しくない人とは目もあわせられないとか、その程度だ。
この学校に入学して一年と少し、僕がまともに話せるのはただ一人、元同室者だけだ。何故『元』かというと、何故か家柄まあまあ頭そこそこの僕が生徒会役員に選ばれてしまったからである。ルームメイトとはクラスが違ったので、生徒会役員は一人部屋だと聞いたとき、これから二年間一人で過ごさなければならないのかと思うと泣きそうだった。
クラスで…否、学校内で僕は孤立している。親衛隊とか、その辺の事情もさることながら、僕は周りから人嫌いだと勘違いされているのだ。
確かにほとんど会話しないけど。
確かに一人で居ること多いけど。
確かに目が合わない奴だけど!!
全部人見知りな自分の性格が悪いのだ。そのくせチキンな僕は他人に嫌われるのが怖くて、頼まれごとは断れない。話しかけられれば返事一言と引きつった笑顔だけ返す。
そのへたくそな愛想笑いの所為で余計勘違いされているなどと僕が知るはずもなく。
とにかくそんな僕が編入生の迎えなんて、最悪なのである。
神様…もとい、会長は僕が嫌いなんだろうか。
確かに数か月一緒の部屋で放課後を過ごしているにも関わらず役員とは用事以外で会話したことないし、目も合わせたことないけど。あんまりだ。
ていうか、もし本当に嫌われてたらどうしよう…。
怖い。人に嫌われるのは、こわい。
泣きそうになりながら学校の正門に向かうと、一人の男子生徒が居た。その男子生徒は写真で見た通り不思議な格好をしていた。嘘じゃないかと言いたくなるようなぼさぼさの頭に、お前何時代だよというような分厚い眼鏡をかけている。近視遠視乱視入ってもそこまで厚い眼鏡かけないだろ。それで前見えんのかよ、みたいな。
人見知りなだけで、僕だって普通の男子高校生である。美的感覚は人並みなわけで。
うん、えっとね、信じらんねぇくらいださいね。
なんてことをやっぱり心中だけで呟きつつ、意を決して編入生の元へ向かう。
「えっと、あの…キミが編入生ですか?」
何こいつ不潔、キモい。なんて思いながらも愛想笑いする僕を誰か褒めてください。
「ああ!!今日からここに来た…」
うるさっ!!声でかすぎだろこいつ!意味わかんないんだけど、僕目の前に居るよね?聞こえるよね?バカなの?なんなの?
「…だ!お前名前は!?」
…あーあ、名前聞き逃した。
まぁいいや。もう関わることもないだろうし。
「友永穂波です」
精一杯引きつらせないように頑張って笑顔を作ると、何故かまったくわからないのだが、途端に編入生は顔を顰めた。
「穂波!お前その気持ち悪い笑い方やめろよ!!」
「…は?」
言葉が理解できずに首を傾げると、編入生は畳み掛けるように大きく口を開いた。
「そんな無理して笑う必要ない!なんか辛いことがあるなら俺を頼れよ!俺が…俺が穂波の本当の笑顔にさせてやる!」
「いや、ちょ、」
「心配しなくていいぞ!俺たちは親友だからな!!」
はぁあああ!?
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