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*vivid vermilion
9

走り出した俺に、数人が飛びかかってくる。そんなものははじめから予想済みだ。ぶん殴って退かせ、俺を守るとでも言うように会長サマがぶっ飛ばす。
二人でかかればちょっとやそっとの相手じゃ負ける気もしない。かかってくる頭の悪そうな不良をのして、殴って、ぶっ飛ばして。瀬良なんて後ろ楯があるからって調子に乗ったところで結局は烏合の衆なんだと思い知らせてやる。
俺よりも先に、瀬良にたどり着いたのは会長サマだった。拳を振り上げ、会長サマは瀬良へ本気の怒りを向ける。
そして降り下ろそうとした瞬間だった。
「っ会長ストップ!!」
俺はそれに気が付いて、叫んだ。
会長も気づいた。
だけど、間に合わなかった。
「っ!!」
勢いよく降り下ろされた手は止まることもできずに、
上坂くんを、ぶっとばした。
「な…」
「上坂…!?」
瀬良よりも小さくひ弱さは本物なのだろう、上坂くんは、会長の攻撃でその場に倒れる。瀬良はしっかりと上坂くんのうしろに避けていて。
「なんで…」
愕然としている会長はもしかしたら、上坂くんが瀬良を、弟が兄を庇ったと思っているのかもしれなかった。だけど、俺にはわかる。
「瀬良…!」
このクソ野郎、弟をわざと殴られに行かせやがった。
「おいおい、生徒会長が無抵抗の一般生徒を殴るとは、何事だよ…っと」
「てめぇ…」
「なんだよ夕歩。事実を述べてるだけだろ?」
「てめぇが俺の名前を呼ぶな」
避けられた拳をもう一度握る。
迂闊だったなんて、思う余裕もない。巻き込んだと悔やむほど思考は回らない。
ただ、目の前の瀬良を殴り飛ばしたくて。
殺したくて。
俺は拳を振り上げる。
瀬良はそれににやりと笑って、避けるのをやめた。
「嘉山!」
それが罠だってことは考えなくともわかった。気づいたのは拳を止められるところでだった。だけど俺はそれを、力一杯振り下ろした。


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あきゅろす。
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