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*vivid vermilion
side-生徒会

【side 生徒会】
コンコンコン、と扉がノックされたのは放課後のことだった。仕事のことで嘉山が来たのだろうと思ったため特に確かめることもなく入れと促した俺は、入ってきた人物に眉をひそめた。

「誰だ、お前は」

それは嘉山ではなく、指定制服の中にパーカーを着込んでフードを目深に被った知らない奴だったから。嘉山よりも少し背は高い。目線を見えないようにしたそいつは警戒する俺に、口許だけで笑う。

「どーもこんにちは、元『無双』特攻隊長、上総龍文生徒会長」

俺の警戒が一気に跳ね上がる。この学園で俺を無双メンバーだと知っているのはこの生徒会の正規役員と…

「朱雀隊の奴か…?」

それくらいしかいない。ただ、こいつはソルでもなければ報告にあったソルと一緒に居る奴とも違う。もちろんあの鬱陶しい銀髪とも。新しい仲間でも呼んだのか。

「違いますよ?」

否定は、簡単にされた。

「私はしがない情報屋です、ってね。だから朱雀隊のメンバーでもなければ、むしろあなたの味方ですよ上総会長」
「味方…?」

突然出てきた情報屋とやらに味方などと言われる筋合いはないはずだ。不審さを隠さずに睨んでいると、そいつは肩を竦めて笑う。

「まあ信用しようとしまいと構わないけど。一応こちらが持ってきた情報を提示すると、あなたの探してる『ソル』の情報なんですよね」
「ソルだと!?」
「…気持ち悪いくらいの食いつきですね」

一瞬だけ口許を歪めたそいつは、殺気に近い嫌悪感を見せて、しかし次にはまたへらりと笑う。まるでソルを手本にしているようなそれにこちらは変な気分になる。

「それで…なんの情報だ」

しかしそんなことには構っていられない。せっかくのソルの情報だというなら、たとえそれが本当でも嘘でも聞く価値はある。

「ソルの出現の情報です」

思わず目を見開く。俺があれだけ探しても偶然でしか見つけられない、見つけたと思ったらこちらが嵌められているようなソルを。こいつは簡単に出現を特定したというのか。

「まあ信じるか信じないかはあなたの勝手ですけどね?」
「…信じたら、どうなる?教えてくれるっつーのか」
「それはあなたが取引に応じるかどうかですよ」

取引。まあ、はじめからただで教えてくれるとは思っていなかった。情報屋などと言ったところでこの学園の生徒なのだから金を要求されることはない気もするが…。

「取引とはなんだ」

それがわからなければこちらも答えようがない。問えばそいつは笑って言った。

「あなたの元チーム、無双の情報をください」
「は?」

それにぽかんとしてしまったのは仕方ないだろう。だって、無双はもうソルに潰されて解散した。そんなものの情報を知ってどうするのか。まったくわからない。

「主には元総長とその直近や実力者ですかね。それさえ教えてくだされば、こちらは今後のソルの出現を逐一あなたに報告します」
「…だが、俺はお前が本当の情報を渡すかはわからない」
「もちろんこちらの行動が先でいいですよ?」

にやにやと笑うそいつが出してきた条件は、極めて簡単だった。一回目に俺はあいつの情報でソルを見つける。その日はどうしてもいいが、捕まえられれば報酬はそのまま受け渡し、捕まえられなければ情報をもらったあとでソルの場所は毎回教えてもらえる。取引としては、悪くない条件だ。

「わかった」

俺が条件を飲み取引が成立すると、相手は満足そうに肩を竦めて踵を返す。

「それでは追ってあなたのケータイに連絡しますね。それでは」
「あ、おい」

ひょいと手をあげて出ていこうとするそいつに、声をかける。連絡先知ってんのかなどは、多分情報屋だなどと唄う以上知っているのだろうが、俺は知らない。

「お前、名前は」

せめて名前くらいは知っておかせろと言うとそいつは、少し思案して、言った。

「ナシ」
「あ?」
「pear、ですよ」

楽しげに笑って言ったそいつにイラッとする。ナシと梨でかけてるとでも言いたいのだろうか。面白くもなんともねぇ。
これ以上引き留めるのもアホらしくて出ていくのを放っておくと、そいつが扉を開けた瞬間、一歩後ずさった。なんだと思って見れば、

「嘉山?」

今度こそ嘉山だった。
眼鏡の奥の目を丸くしている嘉山に、しまったと思う。

「今の人は…」

当然の疑問になんでもないと返して顔を逸らすと、キョロキョロとしながら首を傾げる。

「それより、仕事の話だが」

先程の話を流して半ば無理矢理に仕事の話をすれば、嘉山はすぐにこちらの話に移った。
こういう、あまり人のことに干渉しないのはこいつのいいところなのだろうと思った。


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