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*vivid vermilion
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あのチームは、他よりも更に精力的に、しかしうまく隠れて一般の子達から金を巻き上げていた。ちょうどその近隣を縄張りにしていた無双が内部でゴタゴタがあったとかで解散してしまって、その縄張りを手に入れるためにといろいろ他のチームにちょっかいをかけていたのだが、それとは別に『小遣い稼ぎ』がしたかったらしいというのは卜部さんの情報である。取り敢えずそんなチームを放っておくわけもなく、また無双を潰したおかげでそんな被害があると思っていなかった俺たちは、総力戦を仕掛けた。力で来るチームには力で応じるのが主義ってわけではないが、下手に頭を使う必要はないと考えたからである。ま、まったく頭使わないなんてバカな真似はしてないけど。
まぁそんな感じで初期段階ではいい感じに血の気の多いのが揃っていた俺たちはチームを分裂させて頭をぶん殴りに行った。一般人からはした金巻き上げるような小物の率いるチームに負ける俺たちではないため頭は早々に殴り飛ばしてチームを解散させるようにさせたわけだが、その交渉中に現れたのが、あの王道くんだった。

「お前ら誰だよ!?なんでこんなことを…!」

総長のコイビトだった彼は倒れ伏している総長に駆け寄った。確か、可愛らしい顔をしていた気がする。総長もまあまあ整ってたからそれなりにいいね萌えると思ってた気もする。だからって手加減することはなかったから、今の姉様のお付きにして副隊長の一人がそれを押さえつけた。その様子を冷めた目で見ながら交渉を続ける姉様の邪魔をしないように、俺はそのコイビトと話した。

「離せ!なんでそいつがこんな目に遭わないといけないんだ!ただ喧嘩してただけなのに!」

因みに総長の名前は忘れたので二人称代名詞で。

「そりゃ、その人が喧嘩してただけじゃないからだよコイビトくん」

返した俺を睨む目は覚えていないけれど、なんでだのなんだの喚かれて面倒くささを感じた。だから笑ってやった。

「いーこと教えてやるよコイビトくん。キミの総長さんは罪もない一般の個人からお金をぶんとってたんだよ?」
「嘘だ!」
「嘘じゃないよ?ねー、総長さん」

交渉途中の総長さんに話しかければコイビトくんから目を逸らす。それを見ればさすがに納得せざるを得なかったのかコイビトくんは目を見開いて驚愕をしめした。よほど自分の恋人を信じていたのだろう。
ここで花ちゃんあたりがいたら交渉中に邪魔すんなとか、性格悪いとか茶々入れられそうだけど、生憎今は他所で他の討伐を指揮してるので俺になにか言う人は居ない。

「てこと。キミの信じてた彼は、そんなものだったんだよ。だから、今こんな状況にある」
「だ…だからって…」

コイビトくんはそれでも総長さんを庇いたいらしく、その視線を痣と血でだいぶ可哀想になった床に押し付けられている総長さんに向ける。
その視線を遮るように間に立ったのは、姉様だった。

「ここまでする必要ない、って?でもここまでしないとわからないじゃない。この人たちは」
「でもこんなの、こんな一方的なの…」
「不良なんてしてる時点で、こうなっても仕方ないくらいの覚悟はしてるっしょ?殴られる覚悟のない奴が人を殴ってんじゃねーよってのが俺らの正義の方針だから」

遮って肩を竦めてみせればコイビトくんは顔を歪めた。彼の名前を知らなかったこの頃は、それが何を意味しているのかわからなかったが。
だけども続けられた台詞は、甘くて甘くて甘チャンすぎて、キレたのは、姉様だった。

「人を傷つける正義は正義じゃない?ずいぶんと『正義』なんてものに幻想を抱いてるのね。そんなものはただの偽善だわ。つまらない」

そう淡々と告げコイビトくんの頭に足を乗せた姉様に、姉様を信仰する数名はうっとりとし、姉様に恐怖する数名は怯え、俺は、視線を逸らした。

「人を傷つけない正義なんてないのよ。正義なんて、立場で変わるようなものなんだから」

ぐ、と足に力を込めコイビトくんのほほが地面に擦り付けられる。あーあー、まったく。姉様の気が済むまでやらせてあげたい気もするけど、せっかく交渉に応じた総長さんが面倒なことになりそうだし、助けてあげようかな。

「ねーさまー、スカートで男の子の頭踏むのはどうかと思うよー。後ろのドMわんこも羨ましそうに見てるからやめたげて」

笑顔だけは作ったままで言えば、姉様はあっさりと足をどけた。「ゆうちゃんが言うなら仕方ないなぁ」ってとこだと思う。

ともあれそんな感じが、俺らと王道くんの接点だったわけである。


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あきゅろす。
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