*vivid vermilion
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「つまり早間の部屋を変えるついでに王道くんを『ソル』に仕立てあげようと考えて早間と王道くんを一緒にした、ってことでOK?」
『半分はOKかな』
俺の質問にスピーカーから卜部さんの声が返ってくる。半分ってことは半分は違うってことだ。どういうことか聞くと、卜部さんは何かクリック音を響かせて答えてくれる。
『まず早間くんはゆうくんから離すかつ監視のために梨人くんと一緒にしたんだよ』
「え、早間、梨人くんと同室なの?」
それは…まぁ何か企んだとしても筒抜けだから便利かもしれない。よく梨人くんが了承したとは思うけど。
『次に梨人くんが嫌がるから、条件を出した』
「へっ?」
予想外の言葉に驚きの声をあげると、卜部さんは満足そうに笑う。この人もなんだかんだで焦らすの好きだよね。
「どゆこと?嫌だって言っても隊の命令って言ったら最終的に承諾するでしょ。条件って?」
『うん。でも梨人くんをいいように扱うにはその方がやりやすかったからね』
「いいようにって…」
仲間でしょうに。
『仲間だろうと、そんなもんだよ。それで、梨人くんと上坂くんが仲良しなのは知ってる?』
「そうなの!?」
それは…知らなかった。そんなおいしい情報を知らなかったとかマジ不覚!なんなの梨人くんと上坂くんとか百合ホモじゃないですか可愛い!
『梨人くん、上坂くんからオウドウくんの相談受けてたらしくてね。ゆうくんと一緒に上坂くんの周りも監視してたんだって』
「それでこいつと同室にして、転校生から遠ざけるのと監視をしやすくして、交換条件としてこいつのことに口出ししないよう言いくるめたわけすか」
『そういうこと』
横から口を挟んできた花ちゃんに卜部さんの肯定が返る。なるほどさすがだ卜部さん。まさか仲間の方を使うとは思わなかった。これで姉様にチクられる可能性も減ったってことだね。
『その関係でカモフラージュに何組か部屋を変えたから、いろいろ大変だったよ』
へらりと笑う卜部さんは本当にそう思っているのかはわからないが取り敢えず疑問は解決したと思ったので納得の声をあげようとしたときだった。
『あと、そのオウドウくんの監視もしなきゃだったしね』
「へ?」
予想外の言葉が放たれて、素頓狂な声をあげると卜部さんは不思議そうな声をあげて、だって、と言った。
『あの子と過去に関わりがないか調べてって言ったの、ゆうくんじゃない』
「…あー」
そういえば、そんなことを言った覚えはある。確か超ぶりっ子声で。
「で、関係はあったんだ?」
『うん。無双の次の次…くらいかな?に潰したチームの総長のコイビト、居たじゃない?』
「コイビト…」
復唱しながら記憶を引っ張ってくる。無双を潰したときはわりと精力的に動いてたからなぁ。まだ名前も知れ渡ってなかったから好きなようにできたし。それに、潰したような組の総長のコイビトまで覚えてたらキリないんだよね…。
『ほら、あの自分のコイビトがしてることすら知らずに正義語ってた子』
「…ああ」
思い出した。
――人を傷つける正義なんて正義じゃない!
確かそんなことを言われたのは、当時居た町でも有数の有名なチームを潰したときだ。
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