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*vivid vermilion
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人呼んで義賊、朱雀隊。
最初は義賊なんて名乗ってないし、そんなつもりは今でもないが、いつの間にか俺たちはそんな風に呼ばれるようになっていた。
人様に迷惑をかける不良集団に制裁する、族狩りともいわれる集団。一部弱者には正義の味方なんて崇められている。

俺はその集団の、ツートップの片割れである。
勝者を敗者に、強者を弱者に。なんていう、中二的かっこいい理念が俺たちの基本スタンスで、あくまで『自分たちにとっての』正義を貫くために立ち上げた、俺と姉の自己満足な隊。
最初は俺と姉様の二人だったのだが、いつしか俺たちに賛同する…いや、賛同っていうには理由は様々すぎるけど。利害が一致して、って言った方が正しいのかな。とにかくそんな奴らが集まって来て、今では大きなチームみたいなものになっている。

簡単に言えば俺たちは、悪を倒す悪、みたいな思春期によくある病気にかかったような設定を地でやっているのだ。

「よっし、お掃除完了だね」

周りで倒れたまま呻く不良共を見下しながら、花ちゃんに向かって言う。
ここに来て何度かこういう連中を相手にしているが、そうは言っても甘やかされて育った坊ちゃんだからか、歯ごたえがないったらない。そのくせカツアゲとか――強姦とかしてるから、こんな目に遭うんだよ。

「さて、大丈夫かな、キミ」

服を剥かれたままぽかんと俺たちを見ていた、輪姦されそうになっていた生徒を見て言う。どうにも状況の掴めていない様子ではあるが、見開いたままの目で倉庫内の倒れた奴らを一周見回し終わると、ハッとした様子で緊張が解けたように、涙を流し始める。

「あー、よしよし、怖かったね。ホラ花ちゃん、上着貸したげなさい」
「嫌に決まってんだろ。自分の着せとけ」

そういって落ちていた生徒くんのブレザーを投げてくる花ちゃん。ツンデレベルが高いだと…!?

とかなんとか思っていると睨まれたので、自然に視線を逸らして彼に上着を着せてやる。一応怒声とそれに付随する拳は飛んでこなかったので許してくれたらしい。

「どうでもいいけどよ、気付かれる前にずらからねーとヤバいんじゃねぇのかアホ大将」
「そだね。じゃあキミ」

代わりにかけられた正論に頷き、生徒くんに向くと、ビクッとされた。可哀想に、本当に怖かったんだね。でも俺らはいつまでもここに居るわけにはいかない。

「キミは自分で先生に連絡しなさい。そいつらはしばらく起きないと思うけど、早めにね。それと、俺たちのことは誰にも言っちゃ、ダメだよ?」

にこりと笑って唇に人差し指を当てると、彼は赤くなって首を縦に振る。うん、いい子。ま、言ったところで俺たちのことをこの子が知らない以上俺らのことが話に上がることもないだろうし、多分大丈夫だろう。
最後に頭を撫でてあげてから、その場を立ち去る。




「よーっし、完了の電話したら今回の任務は終了だね。しばらくはBLウォッチング生活に励むとしますかー!」
「………」
「あれ、花ちゃん?」

ちゃんと聞こえるように言ったのにツッコミが返ってこないことを不審に思って花ちゃんの顔を覗きこむと、複雑そうな顔を向けられて疑問符を掲げる。何?とは目で問うたことだが、少し迷った後で、花ちゃんは眉間に皺を寄せたまま言った。

「…『無双』の連中が、お前の事探してるらしいぞ」
「…………へぇ」

自分の声が少しだけ、冷めたのを感じた気がした。

「学内にいることも、多分バレてるぜ。姫に言ってしばらくおとなしくさせてもらった方がいいんじゃないか?」

珍しくも心配そうな花ちゃんの弱気発言に笑いが漏れる。らしくないなぁ。

「大丈夫だよ。見つかんないって」
「お前、その自信はどっから来るんだよ」
「さてね。それに、そんなことで活動やめたら、俺の正義に反するでしょ?」

そのためにきたのに、さ。


この学園は王道である。ゆえに、とは言わないが、腐ってる。俺じゃなくて学園が。
親衛隊の生徒会やらにまとわりつく子たちに対する制裁はまぁ王道で、問題であるのだが、しかし、そんなことは氷山の一角である。
この学園には隠れ不良集団が多い。こんな狭い空間で、はやっているのかなんなのか知らないが、荒れているのだ。生徒会なんて光の影で、今のみたいな奴らがうじゃうじゃと、今回のようなことを、しかも頻繁にしているというのだ。そんなチームが多い上閉鎖空間だから、外からの干渉はない。風紀委員なんてものはお飾のような集団で、今回みたいなタイプは泣き寝入りしなければならないことばかりだともいう。
だから、俺たちが来た。
所謂、まさしく制裁のため。
人にやられて嫌なことは自分もすんなってね。
する側の人間をされる側の人間にしてしまう。それが俺らの正義。

「…なんかリバっぽい言い回しになったなぁ」
「黙って帰れ」
「はぁい」

それが俺たち朱雀隊。


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あきゅろす。
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