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*vivid vermilion
3

鬘を取り、眼鏡を外し、俺は躊躇なしにドアを両手で開け放った。横開きの扉って好きだよ。かっこつくもんね!

外からでもわかりやすく電気の付いていた第三体育倉庫の中には、頭のカラフルなガラの悪い連中が無駄にたむろしていた。あーあーヤだね、金持ちの息子がこんな体育倉庫に集まっちゃって。ムサい男ばっかで絵が寒いったらないぜ。もっと可愛い子やイケメンの群れならテンションも上がるのにさ。

全員がこちらを見たのを確認して、俺はできる限りの満面の笑みを浮かべて言ってやった。

「ハローくずども。大掃除の時間だぜ」

俺の笑顔に一瞬赤くなった連中は、すぐに顔色を変える。ちゃんと言葉の意味は理解できるらしい。

「なんだてめぇら!」

そんなダミ声を筆頭に、狭い倉庫内のいろんなところから頭の悪そうな罵倒が飛ぶ。でも俺、聖徳太子じゃないから聞き取れなーい。こいつらのダミ声なんて聞き取る気もないしね。

「なんだって言われましてもねー?」
「…」

可愛子ぶって花ちゃんに同意を求めると、無視された。
…花ちゃんって仲間内でも特別ノリが悪い方なんだよね。無愛想で赤髪切れ目なんて典型的なイケメン不良スタイルで花ちゃんって(笑)。いや、しかしこれ、花ちゃんが早間あたりに攻められたらおいしくね?腹黒爽やか×不良てよくね?

「てめぇら…バカにしてんのか?」
「どこのどいつか知らねーが、のこのこ二人だけで乗り込んでくるなんて、バカだよなぁ?」

王道脇で是非やってくれとか考えていると、いつの間にか体育倉庫の扉は閉じられていて、俺と花ちゃんは見事にこの狭い空間の中で囲まれていた。
わざわざ真ん中まで来てやってたんだから、それくらいしてくれないとアホすぎてつまんねぇけどね。

「バカじゃありませーん。あと、もちろんバカにしてるよぉ?」

再び満面の笑みを浮かべて言ってやるが、今度は数名を覗くほとんどは赤くなることはなく、ガラの悪い返事を返してくれた。いやぁホント、予定通りの反応してくれて俺は嬉しいよ。

「キミらさー、俺らが何か、わかってないっしょ?」

仲間には整ってるだの可愛いだの評判のいい顔でにこにこと笑い続けながら言葉を返す。因みに俺自身、美人な姉様の弟として顔は良い方だと自負している。変装はそのためでもあるんだからね。

「知るかよ、風紀の奴ら…じゃねぇよなぁ?」

そんな笑顔を浮かべているにも関わらず普通に怪訝そうな雑魚ども。反応は予想通りなのに、なんだろう、軽くムカつくね。
しかしさすがに風紀だとは思っていないらしいか。まぁ風紀なら二人で取り締まったりなんてしないし、奴ら腕章つけてるから萌える…じゃなかった、すぐわかるもんね。

だからまぁ、そろそろもったいぶった話し方するのも飽きて来たし、正体くらいちゃっちゃと明しますかね。

「朱雀隊」

にこにこ笑顔を意識的に嘲笑に変え、俺は名乗る。

「俺らは朱雀隊。正義を執行しに参上仕りました」

瞬間、倉庫内がざわついた。
名前くらいは知っていてくれたかー。知らなかったらどうしようかと思った。自意識過剰の恥ずかしい奴になりかねなかったからね!

「朱雀隊だと…そんなもんが俺たちに何の用だ!?」
「何って、心当たりあるでしょ?カツアゲ暴行エトセトラ。俺らが出てくる条件は十二分に揃ってると思うんだけど?それに…」

す、と視線を奥に向ける。その先には倒れ伏した、一人の少年。

「現行犯だし」

その言葉に逃げられないと悟ったのは、まぁ妥当。いきなり襲いかかってくるのもまぁ当然といったところか。
いやー、怖いわー。もうちょいバカにしてやろうと思ったのに。

仕方ない。

「強者を弱者に、勝者を敗者に。俺的正義を執行しちゃうぞ☆」

決め台詞というには残念中二病的な(仲間談。俺的にはいいと思うんだけどなー)決め台詞を言い、俺は、微笑んだのだった。


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あきゅろす。
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