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*vivid vermilion
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王道学園。
全寮制男子校。
まぁそれだけで言えば大抵の人には理解していただけるように、この学園は山奥に立つ全寮制の金持ち坊ちゃんばかりが集まる、ホモやバイの巣窟…つまり俺にとっての聖地。
なにもかもが王道なこの学園では、親衛隊なんかが蔓延ったり生徒会が学園を牛耳ったり風紀委員が学園を取り締まったりしている。

お姉ちゃんマジで愛してる。将来はできれば姉と結婚したいんだけど姉弟婚を認めてる国ってあるんでしょうか。

「嘉山ー、起きてるか?次移動だぞ」
「ああ、ありがとう」

なんてまぁ無理なことを考えつつ表情を変えずに簡単に返すが、この一年で慣れてくれた学生寮の同室者にして友人、早間巽は嫌な顔ひとつせずに席から立ち上がる俺を待ってくれる。体育会系のいい奴で、親衛隊はないけど騒がれる程度のイケメンで、爽やか系男子だ。きっと王道転入生とか来たら爽やかに惚れてくれるんだぜ!そして同じく惚れた王道の同室者(一匹狼)と仲悪く王道を守ってくれるのさ!

「嘉山、そっちじゃないぞー」
「…そうか」

おっと。邪悪な思考に耽っていたら全然違う道に行こうとしてた。
軽く謝り早間の少し後ろをついて行く俺は…まぁ大方の予想通り、素を隠して、というか借り猫を被って生活している。性格だけではなく鬘被って眼鏡してるから完全な変装だね。もちろん王道のようなもさルックではない。黒髪黒縁眼鏡の無口無表情な優等生である。仲間に言われた通り、口を開かないで最高の存在になりましたよ。まぁ容姿も変えちゃったからただの地味男になったんだけど、必要条件だったからなぁ、変装。
俺の――俺たちの目的のために目立つためにはいかないからさ。

まぁあとはそれに加えて…。

「あ、生徒会長様」

ぼそっと呟かれた早間の言葉とざわざわし始めた生徒たちに、俺は即座に物陰に隠れた。

「嘉山、本当に会長様ダメだよな。なんか因縁でもあんの?」
「顔が苦手なだけだ」

苦笑で言ってくる早間に俺は言いなれた嘘を吐く。寧ろ会長サマみたいな精悍な顔は俺様攻めとして大好物なんだけど、顔を見ないようにするにはこれが一番の嘘だ。見つかったとしてもこの容姿で気付かれはしないと思うけど、念のためね。

そんな感じでおわかりいただけるだろうが、俺が変装している理由の一つが、あの生徒会長サマ…及び彼率いる生徒会なんだよね。

なんたって彼らは、

昔俺がハメ潰した連中なんだから。


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あきゅろす。
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