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*vivid vermilion
14

「――え?」

見れば会長サマは俺の腕をつかんでいる。この人は確か、引き留める人ではなかったはずなのに。
そんな俺の思いも知らずに、会長サマはうつむいたまましゃべる。残念ながら俺の方が小さいので表情は丸見えだ。

「待ってくれ、ソル……嘉山」
「……会長サマ」
「嘉山。ソル。前と同じように呼んでほしい」

だから、俺は切実なそれに、思わず応えてしまった。

「かずくん」

あー、そうだ。そうだったな。なんて思いながら。
お別れの言葉。それはいつだってそうだった。つい先日だって、お世話になりましたと言いながら俺はそれを思っていたのだ。会長サマが、カズくんがほしいのはきっとそれ。
やり直したいのだ。
彼がそれで前に進めるのなら、言ってやろうじゃないかと

「それで、もう一回言ってほしい」

俺はそう思って

「うちに来ないか、って」
「ん??」

首を傾げた。

ん?おかしい。おかしいよ?

今俺は感動のお別れシーンをするつもりだったよね?さよなら、かずくん。って三度目になるセリフを言って、んでかずくんは俺を諦めて最終的に学園の誰か……会計サマかな。うんそのあたりだ。慰められてお前が隣に居たんだなってなるパターン。と恋仲になる予定だった。はずなのに。あれ?え?

「かずくん、朱雀隊入りたいの?」

何も考えていないかのようなド直球を返してしまって、かずくんがたじろいだのを俺は見た。あ、うん。一度断ってる話だもんね。そんな聞き方されたらいやだね。
え、ええー……。

「俺は、もっとお前と居たい。お前が好きだ。お前を守りたい」

つらつらと恥ずかしげもなく言っていくかずくんに、さすがの俺も照れそうになる。
どうしたらいいの、これ。
困惑を表情にして、俺は振り返り助けを求めた。

「…………うふふ」
「…………あっはは」

求める相手を間違えた。
目が合った姉様は素敵に笑った。俺は引きつって無理に笑った。同じ方向に居る花ちゃんが、怒った顔をしているのが視界に入った。
結果はそれだけで、十二分にわかってしまった。

「……かずくん。これからよろしく」
「っソル!!」

バッと顔を上げるかずくんに、俺は困るしかない。完全に俺の意志というよりは姉様の都合で仲間にしちゃうんだもんな。それをこんな嬉しそうにされたらなんというか、さすがの俺も罪悪感があるというか。
まあ、決まってしまったもんはしかたない。姉様の決定だから花ちゃんも何も言えなくなってるし、俺に言えることも何もない。
好きだとか云々は今は考えないことにするとしよう。その感情は、この隊に居るにおいてどう作用するのか俺は知らない。
ともかくだ。そのあたりは追々考えるとして俺は、まず朱雀隊のかずくんに、一言物申すことにしよう。

「あ、言っとくけど俺、その呼び方キライだから」



さしあたりそれしか言いたいことがないのは、まあ実際俺がかずくんを仲間にするのが、嫌ではないからである。


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あきゅろす。
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