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*vivid vermilion
プロローグ

「ゆうちゃんに、プレゼントがあるの」

語尾にハートが付きそうな口調に猫撫で声でそう言った愛しの姉様は、生まれてこの片俺に嘘を吐いたことがない。
だから彼女の言うプレゼントというものはつまり、俺にとって有益以外の何物でもない、本気のプレゼントである。

「プレゼント?」

俺はにこにこと楽しそうな、人形のごとく端正な顔に首を傾げて返す。
同時に朱がかった髪が揺れ、周りがざわついたのを感じた。それはまぁ、姉様と姉弟の俺がまぁ整った顔立ちをしているからというのもあるが、まずここの連中が俺を大好きだというのが大きい。
慕われている…というには多少狂信的ではあるが。

――と。だから俺は思いもよらなかったわけだ。

愛しの姉様が、俺をここから離すだなんて。

「ゆーちゃんのためにお姉ちゃんね」

そう、冊子を取り出した彼女の目は爛々と輝いていた。

彼女には好きなものが三つある。

ひとつは言わずもがな俺。
ひとつは…正義。昔騙した中に「人を傷つける正義なんて正義じゃない」なんて言っていた奴が居るが、彼女の…ひいては俺の持論としては「人を傷つけない正義なんてない」だ。正義なんて、立ち位置によって変わってくるのだから。
俺たちはそれを盾に、こんなことをしているのだから。
この辺は追々語るとして。

もうひとつは。

「全寮制男子校の裏口入学権を取得して参りましたー!」

BL、である。

「お姉ちゃん愛してる!」

因みにシスコン気味な俺の好きなものは姉と正義とBLです。

「生BL見放題だよゆうちゃん!右から左から前後上下ホモだらけだよゆうちゃん!」
「姉様大好き!男同士のにゃんにゃん見放題!やばい死ねる!しかし生きる!」

仲間たち曰く、「口を開かなければ最高の姉弟」。
そんな姉弟が大好きなキミたちも大概だぜ。

「それでね、ゆうちゃん」

二人してしばらく両手上げて喜び合い、姉様が語調を最初の猫撫で声に変えたのは、そろそろいい加減にしろと文句が飛んで来そうになった頃だった。
俺が聞く体勢になれば、彼女は美しく微笑んで、美しい白に近い金髪を揺らした。

「おねーちゃん、ゆうちゃんにお願いがあるの」

そして言われお願いに、俺は微笑むのだった。


「任せてよ。おねえちゃん」


腐男子な俺の、最初のお話である。


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あきゅろす。
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