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*青春コンフリクト
僕らは反対向きなんだ

『僕らは反対向きなんだ』

【柚子島尚木】

俺の友人は、人気者である。

毎朝学校に到着する度に思うのは、そんなこと。
俺の友人こと、今自分の席で周りに人を集めて楽しそうに笑っている山内和史。誰とでも仲良くなる能力の持ち主。社交性の権化。

俺とは真逆のタイプ。

…や、まぁ今はそれはいいんだけどさ。
あいつが人気者で困ることが、俺にはあるのだ。

(座れない…)

あいつを囲むために集まっている奴らが、あいつの前である俺の席まで囲っていて…というかいっそ俺の席に座っていて、俺が席に行けない。
きっと行けば避けてくれるだろうし、周りの人たちと仲が悪いというわけではないのだが、なんとなくあの空気を壊しづらいといいますか。空気の読めない奴みたいになりたくない、といますか。

(昨日はあんなに嬉しかったのに…)

席替えのくじで前後を当てた自分によくやったとすら思ったのに。

(……ダメだ)

予鈴が鳴るまで適当に時間潰そう。

あいつと違って人と話すのが苦手で、特別仲良くなければ少しの会話でもテンパる俺。まぁいわゆるコミュ障ってやつ。
情けないとは思うけど、今更直るようなものでもない。

(つーか、悪化してきてる気がする…)

小さくため息を吐きながら踵を返し教室から離れようとしたときだった。

「よっ」
「っ!?」

背後から声を掛けられた。

誰、なんて考えなくてもこのクラスでこうまで気軽に俺に挨拶してくる相手は一人しかいない。

「……はよ」

振り向けば予想通りの相手が居て、驚きで高鳴った心臓を鎮める。いきなり声掛けるからびっくりしたじゃんか…。

「どこ行くんだよ?」

先ほどまで輪の中心で話していたのに、なんでこんなとこに居るんだと思いつつ「トイレ」と適当なことを言っておく。

「鞄持ったまま?」
「…忘れてた」

適当に嘘を吐き、自分の席から人が散っているのを確認して鞄を置いてから、嘘を本当にするためトイレに向かう…のだが。

「…なに?」
「え、一緒に行こうと思って」

何故か山内さんまで付いて来た。

不審がるように見せれば特に何も考えてないような顔であっけらかんと笑われ、こちらもつられる。深く考えるだけ無駄というものか。

「高校生にもなって一緒にトイレって…」
「いーだろ別に」

ポジティブで人気者で明るいこいつ。
ネガティブでコミュ障で暗い俺。

それでもこいつと居れば楽しいから…真逆でも一緒に居たいなんて、思わされちゃうんだよね。



(反対なのにそばに居たいなんて)
(高慢なのかな…)


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