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7

望月で最後だったらしく、俺はそのまま生徒会室に戻された。他の役員は既に帰っていて、居るのは俺と碓氷と津久見の三人になる。凌には迎えに来てもらえるように連絡しているので、今は待機中だ。本当は充明さんと滋さんの様子を見るために守衛室で待っていたかったが、しばらくまた会えないのだからと碓氷に生徒会室に呼びこまれたのだ。こいつももう生徒会役員ではないはずなんだけどな。

「これでうちの連中には牽制し終わったな」
「お前の目的なんだったの?」

牽制じゃなくて、説明に来たはずだったんだけど。ていうかもとに戻った今、そして碓氷と……付き合ってるという事実がある今牽制なんて必要ないと思うんだけど。

「まあ、半数くらいは志麻さんの見た目で怯んでたからねー」
「津久見、俺そんなにいかつい容姿してるか?」
「そうじゃなくて……志麻さんってそのへん鈍感なの?」

いや、だから美形ぞろいのお前らに言われるほどじゃないって言ってるんだけど。イケメンだとかは山井とかからよく言われるし。「鏑木のイケメンー!」って、まるで悪口かのような語調で。

「てか会長、こっちの人たちより志麻さんの周りの人牽制した方がよくない?」

そしてどうでもいいかのように話題を移すな。また勝手なことを言う津久見に、碓氷もぶつぶつと呟いている。早く大学に進みたいだのなんだの言ってるけど、こいつ俺と同じ大学に行く気だろうか。まあレベル的にも問題はないと思うけどさあ。

「特に蓋見さんって人なんだよな……」
「お前さ、何度も言うけどゆきじはそういうんじゃないからな?」

ゆきじ以外も、普通の男友達は恋愛対象にはなり得ない。何度説いてもわかってくれない碓氷に肩を落とす。心配するなら野郎相手ではなく、女子のことを心配してほしいものだ。お前の恋人、一昨日女子にアプローチかけられてますよ。

「あと、綾瀬さんだな」
「凌さんは俺が見張っとくから大丈夫だよ」

可愛いな!!……じゃなくて。本当に津久見の凌への気持ちがどうなってるのか知りたいのは置いておいて。凌はもっとない。なぜって、奴は腐男子だ。
何度言っても嫉妬交じりの心配ばかりされて、正直疲れてくる。何が疲れるって、その嫉妬を感じ取って恥ずかしくなるのに疲れるのだ。独占欲だとか、愛情だとか、そういうものを向けられるのを実感してしまうと、慣れるほどの回数であっても照れるものは照れる。

「……俺のこと信用しろっつーの」

俺がお前を好きなんだから。

向けられるばかりの愛情に限界を覚えて、碓氷の前に立ち小突いて言う。どうだ恥ずかしいだろ。こっちも恥ずかしいのを堪えて表情ばかりは平然として見せていると、視界が唐突に暗くなった。がばりと、何かが俺に覆いかぶさる。それが碓氷だと気付いたのはすぐだ。碓氷の方が高いとはいえ、俺もそこそこ身長はある。顔が隠れるのも一瞬だけだった。
けれど、顔が見えるからこそその目に津久見も映って。

「あんまいちゃいちゃしないでよねー」
「話せ碓氷!!!」

思わず突き放そうとした手は、けれど夏彦の体でもないのに意味をなさなかった。
どんだけ力いっぱい抱きしめてんだ!


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あきゅろす。
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