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蓋見珠洲那と、
「あれ、先生だ」
「おー、蓋見妹。何やってんだ?」

深夜のコンビニ前。仕事帰りに偶々出会った俺の直のではない生徒は、出会って早々、先生に対してたかりにかかった。

「ちょうどよかった、今のどが渇いてたんだー」

なんて。

俺からジュースを巻き上げた蓋見妹によると、今日はこれから鏑木の家に行くらしい。なんでも今日鏑木の父親が鏑木の家に行っているということを知っているのは、昼に兄の方にきいたからだが。
朧はそれでドタキャンされて、そこには蓋見兄妹が呼ばれたわけか……。
少し可哀想な気持ちになったのは、俺のせいではないだろう。

「お前ら鏑木の父親と仲いいの?」
「ん?仲がいいかはわかんない」

兄の方も鏑木の父親に関して詳しいみたいに話していたが、実際に親子水入らずに入っていくくらいなのだから相当良くされてるんだろうと思いながら聞けば蓋見妹は首を傾げる。まあこいつらの基準では、鏑木と自分たちの仲の良さが周りからどう見られているかもいまいち理解しきってはいないみたいだから、この主張もあてにはならないだろう。
普通、よその家の久々の親子水入らずに顔を出す友人はいない。そのへん常識というか一般論を、志麻くんは知ってるはずだけどな。うちの問題のときのことを思い出せば、あまり詳しく考えたくはないけれど。

「でもあの人、おとうさんみたいなんだよね」

しかし、思考を打ち消すよりも先に、蓋見妹が少し驚くことを言ってきた。
鏑木の家と違ってこいつらの家のことはほとんど聞いたことがないが、

「お前らの父親と似てるのか?」

だとしたら、驚きだ。

「え?まさかあ」

蓋見妹は俺の驚きをおかしそうに否定したけれど。そうなのかと返せば「微塵も似てないよ」と静かな調子で言われる。鏑木も蓋見もいないからか、いつもよりも落ち着いた蓋見妹は、あまり見慣れないものである。

「実在の親とは全然かけ離れたところで、私たちのお父さんみたいに接してくれるってこと」
「はあ」
「ゆきじの反応とか、結構わかりやすいでしょ」
「あー」

そういわれてみれば。クソ親父と言っていたところも、それにあの言い様。普段から近しい人に辛辣な蓋見だが、あのしゃべり方は親父の話をするときの鏑木にちょっと似ていた気もする。

「なんつーか、ちょっと見てみたいな鏑木父」
「たぶん先生が大変な目にあうよ。あと、しましまがすごい嫌がる」
「だろうな」

大変な目に合うかはしらないが、会いたいわけではなく見たいなのは正直もし会ったところでどう接していいかわからないからである。
といったところで、かんからん、とごみ箱にごみを捨てる音がして、隣を見れば蓋見妹は俺から巻き上げたジュースの缶を捨てているところだった。もう飲み終わったのか。

「じゃあ、また面白い話だけでも聞かせてくれよ」
「いーよ。それも多分、しましまも…ゆきじも嫌がるけど」

今から鏑木家へ帰るらしい蓋見妹に言えば簡単に了承が返ってくる。鏑木は嫌がったところで知れているし、兄の方に嫌がられるのも別に構わないためおうと返事をして、俺も家へ帰ることにした。








おまけ
「ところで、面白い話ってたとえばどんなのがあんの?」
「えー?昔しましまの家に行ったとき、酔っぱらったおじさんにキスされて、感触消すのと嫌がらせのためにしましまに、おじさんと間接キスさせた話とか?」
「それ絶対朧に言っちゃだめだぞ」
「??なんで?」
「あれこいつ知らないんだっけ」




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あきゅろす。
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