Main E 「お前らがコーネリアに滞在していることも、クリスタルが今日、彼とデートにでかけることも。当日にいきなりお昼に誘うだなんて、それこそレディに失礼だろう?」 唐突はあまり、好きではない。いっそわざとだとも言えるくらい、二度目のそれをやってみせたパンサーである。けれど咎めることはできなかった。 その言葉が一体、何を意味するのか。いくら言語理解力が少々乏しいファルコとは言え、行きつく先はひとつ。元元の狙いが、自分にあったということ。彼の大きな口が手のひらに向けて発言したために少し聞き取り辛くはあったけれど、次は全てを読み取れた筈だ。 そして少しだけ間を置いて、意を決したかのように口を開いた。 「デートだよ、これ」 吐き捨てた彼は、最後の最後でしくじった。恐らく気恥ずかしさに堪え切れず、完璧に顔を背けてしまったのだ。黒色の獣は表情を読み取りにくくすると聞くが、それがかえって裏目に出てしまっている。 それはつまり、ふと表に出してしまった決定的な表情の変化は、目撃してしまえばきちんと読み取れてしまうということ。恐らくは相手がファルコであることが彼をそうさせてしまった。腕など組んで強がっているのだろうが、残念ながら強くは見えそうにない。 不覚にも胸が高鳴った。 これもお前の策略なのかパンサー・カルロッソ。スターウルフの女たらしが聞いて呆れる。人を落として、そっぽ向いて照れて。どうせ内心悔しいんだろう。もしも確信犯ならあまりにも策士すぎて、はまってやるしかないじゃないか。 なかなか年下らしくて良い。 「お前、可愛いな」 「うるさい!」 思わず漏れ出た一言に全力で返してくる様が余りに不似合いで噴き出してしまった。タイミングが良いのか悪いのか、ようやく運ばれてきた料理のことなど、もはやついで。 いい遊び相手を見つけてしまった。いい休日になってしまいそうだ。 そして頭をおかしくしてしまったんじゃなくて、元々おかしいようだったので何よりである。 「なあ、取り分けてくれるんだろ?」 「…当たり前だろ」 不貞腐れながらも従順なパンサーに、ファルコの笑みは止まらなかった。 END. [*前へ] [戻る] |