Main A 通信希望のコールが鳴る。差出人は噂の彼。レオンが積極的に応対するということはあまりないのに、奴となるとすぐに承認する。ジリリと少しのノイズがちらついたあと、それはもう鮮明に映し出される羽の青色の、また目に痛いほどに眩しいこと。惚れた欲目に見れば目が焼け落ちてしまうんじゃないか。その危険性を孕む男は、今頃ベンチプレスで通常ありえない数値を叩き出していることだろう。 『おう、ウルフ居るか?隠しキャラの召集がかかってんだけどよ、あいつまだ委員会に嘘の番号教えてんだろ』 「情報漏洩で万一という可能性もある。お前を介した方がまだ安全だということを分かれ」 「…宿敵が知ってるとかありえないだろ」 ギロリ、突き刺さる殺意にそれ以上何も言わなかった。実際殺されることはない。ギャグの弾丸ほど当たらないものはないのだから。両手を挙げててきとうに舌先2ミリから吐いて出た「はいはいスミマセンデシター」と誠意のない謝罪を聞いているのかいないのか、レオンは再びファルコに向き直る。 「とりあえず顔を出せ。あれが喜ぶ」 『マジかよ。喜ばれても嬉しかねえけどよ』 交わされる軽口に違和感は覚えない。けれど、以前では到底ありえないことだったそうだ。かつてスターウルフがアンドルフの手先としてスターフォクスと対峙した時には、4対4の純然たる真っ向勝負が繰り広げられたと聞く。対アパロイドで共同戦線を張る少し前から加入していた身としては、その事実の方が信じられない。 現時点に於いて、操作室に易々と姿を見せている辺りのこいつの危機感の無さにも問題はあるのではないか。どうせ釘をさされるので口には出さないが、どうやら目に出てしまっていたようだ。レオンへの挨拶(おう、ととても不躾な一言)の後こちらへ向き直り、「邪魔するぜ」と言った。 「分かってるなら自分のシマへとっとと帰るんだな」 「仮にもそっちから招かれてんだがな。」 「言いたいことは分かっているんだろ?」 お前を好ましく思っていない。言外に匂わすのを、鼻はいいのか本能なのか、とりあえず頭ではない部分で嗅ぎ取ったようでファルコは苦笑いをしてみせた。やけに斜に構えたところも非常に気に食わない。これ以上の会話を続ける意味はないと、細い脚はそのままトレーニングルームへと向かった。 「子どもか」 「27だ」 「子どもだな」 「うるさいな」 噛み付かれる筋合いは、ある。けれど希望しない。目も合わさなければわざと聞こえる溜息が、その場の空気を余計に重たくした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |