新しい王子
午前の自習を終えると未鷺は食堂でみちるを待っていた。
「お昼ご飯一緒に食べよう!」と誘ってきたみちるの声は明るくて、気持ちの切り替えの早さに感服する。
幸い未鷺の親衛隊は誰かと未鷺が食事を共にしても制裁を行うようなことはないし、風紀委員とその補助という関係上、妙な噂を立てられることもない。
未鷺はみちるが来るのが遅いので、携帯を開いて昨夜届いていたメールを読み直した。
『裏切り者め』
本文にはそれだけが書かれている。
知らないアドレスからのメールだった。
未鷺は誰も裏切った覚えがないので首を傾げる。
心当たりがあるとすれば兄だったが、彼だったら直接言ってくるだろうと思う。
とりあえず『誰だ』と返信したところで近づく足音に顔を上げる。
「菖蒲さん」
やってきたみちるは笑顔だった。
「新しい王子様見つけたよ」
「そうか」
王子というのは簡単に見つかるものだな、と思いつつ未鷺は頷く。
「この人!」
とみちるが示した先には訳のわからないと言った顔をした元秋が立っていた。
元秋と数秒間見つめ合った後、未鷺は「そうか」と答えた。
「鬼原だったら優しいし体の相性もいいから大丈夫!」
「おい何の話だ――」
「それなら良い」
未鷺は元秋を遮って無表情で立ち上がるとみちるに視線をやった。
「早く取りに行かなければ食事かなくなる」
そう言ってバイキングの始点へと姿勢良く歩き出した。
「僕達も行こう!鬼原」
笑っているときのみちるの顔は愛らしい。
元秋はああ、と唸るように答えながら未鷺の背中を見ていた。
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