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疑惑


元秋が朝食のために部屋から出ると、廊下に野原と或人の姿があった。

「あ、元秋!ごはん一緒に食おうぜ!」

ぶんぶんと手を振ってくる。
元秋はああ、と気のない返事をした。

「未鷺と慎一も!」

野原が声を弾ませたので、元秋は振り返った。
未鷺と慎一が微妙な距離感で歩いて来ていた。
野原の注意がそちらに移ったことに気付くと元秋は或人を引きずって隅に連れて行く。

「いやーん鬼原君強引」
「うるせえ」

元秋はしなを作る或人を軽く殴った。

「又出のこと教えろよ」
「何か変なことしてた?」
「気になることはあったな」

元秋が答えると或人は形の良い眉を歪めた。

「何?」
「そっちが先に教えろよ」
「……菖蒲さんが精液付きの写真机に入れられてたの知ってる?」

或人が小声で言った。
元秋は頷く。

「又出はその重要参考人の一人ってとこかな」
「何でそう思うんだ?」
「話せば長くなるから今は理由は言えないけどけど本当」

或人はきっぱりと言って元秋を見た。

「で?気になったことって?」
「たいしたことじゃねえ。俺に隠れて何かしてたように見えただけだ。俺が風呂から戻ったとき妙に慌ててた」
「携帯触られてなかった?」
「……わからねえ」

或人は難しい顔をして頷いた。

「そう。じゃ、菖蒲さんに変なメールとか電話が来てないかさりげなく聞いてみてよ。それが出来るのは多分鬼原だけだと思うから」「わかった」
「親衛隊の方でもいろいろ調べてるからわかったら教える」

元秋は真剣な或人の目を見て確信した。

「お前本当に菖蒲のことが……」

好きなんだな、と続けることが出来なくて口を閉じる。
或人は曖昧に笑った。

「早く行かなきゃ俺と鬼原まで噂されちゃう!」
「勘弁しろよ」

二人は遅れて朝食をとりに向かった。

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