部屋
午後9時まで自習をさせられた生徒たちは疲れた様子で部屋に戻って行く。
元秋は戻る途中で又出と出くわし、彼が持っていたカードキーで部屋に入った。
「俺風紀補助の仕事あっから先に風呂入んぞ」
「風紀補助……あ、はい」
又出は怯えたように返事して決して元秋に視線を向けようとはしなかった。
舌打ちしたい気分を抑え、元秋は勉強道具と携帯をベッドに投げると、ユニットバスに入った。
服を脱ぎかけて下着を持ってくるのを忘れたことに気付く。
入浴後に全裸で出て行くことなど元秋は男同士で気にもしないが、又出の怯え様を思うと避けるべきかと考える。
制服を脱ぐ手を止め部屋に戻ると又出が焦った様子で自分のベッドに座るところだった。
「何だよ」
又出の不審な動きに眉を寄せて尋ねると、彼は頭を横に振った。
「ごめんなさいあの驚いただけで」
「ああ……」
この様子を見ると驚いただけと言われても納得出来た。
しかし或人が『気をつけて見といて』と言っていたのを思い出す。
一応このことを話してみて、又出を気にする理由を或人に聞き出そうと決め、再び浴室に入った。
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