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黒歴史


教師が終了を告げると、生徒たちはがちゃがちゃと筆箱にペンをしまった。

元秋は一番後ろの席から艶やかな未鷺の髪を見ていた。
上位クラスには靖幸と慎一、未鷺といった学園の人気者がいるため長い自習時間も楽しんでいる生徒が多かった。

ふと視線を感じた元秋がそちらを向くと、緑色の瞳がじっとこっちを見ていた。
靖幸だ。
なんで見られてんだ、と元秋が思う間もなく靖幸は視線を外して勉強道具を持って部屋を出て行った。





夕食後風紀委員と補助でミーティングがあるというので、彼ら12人は同じテーブルを囲んだ。
元秋はなんとか未鷺の向かいの隣に座ることが出来た。

「菖蒲さんは実家だとどんな物食べてんの?」
「どんな物……?普通だ。栄養バランスを考えた和食」

隣の席に座った体育会系の生徒がここぞとばかりに未鷺に話しかけている。

「好きな料理とかは?」
「……豆腐」

それは料理じゃねえ、食材だ、と元秋は内心でつっこんだが、未鷺と話している生徒は気にも留めてないようだ。

「豆腐?あー、大豆製品って肌にもいいらしいよね。菖蒲さんが肌綺麗なのはそのせいかな」

とその生徒が未鷺の皿を押さえる手に触れるのを見て元秋はフォークを取り落とした。
それが皿に当たってがちゃりと鳴ると未鷺の目が元秋を映す。

「……悪い」

元秋が小さく詫びると未鷺が目元だけで笑う。

「大勢で食事するのもたまにはいいな」

元秋にしたら暢気過ぎる未鷺の発言に、風紀委員達は「そうですね」と同意する。
それきり未鷺は黙って滅多に見ないほど上品に食事を進めていった。

夕食の時間が終わると一般生徒は一時間の休憩に入り、部屋や地下の運動場で思い思いの時間を過ごす。

風紀委員はその間にミーティングを行う。

「事前の打ち合わせ通り、決められた部屋に二人揃っているか、飲酒した形跡がないか、ゲーム機の持ち込みがないかを調べてもらう。ペアに分かれろ」

未鷺の指示で生徒は移動を始めた。

元秋の隣には未鷺の親衛隊に入っている飛田という生徒が並んだ。

未鷺の傍に進み出た生徒を見て、元秋は思わず声を出しそうになった。
一年のとき誘いに乗って抱いたことがある生徒。
背は平均よりやや小さいくらいで、一重の大きな目をしている。
名前は確かみちると言った。

今となっては未鷺のみに性欲が向けられる元秋にとって、簡単に誘いに乗っていた頃は黒歴史だ。
みちるが何か言ってきて、それを未鷺に聞かれるのではないかとひやひやしていた元秋は、未鷺の説明がほとんど頭に入らなかった。

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あきゅろす。
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