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初めまして?


元秋はホテルの部屋へ戻りながら日鷹について話す前を歩く生徒の会話に聞き耳を立てていた。

「かっこよかったねー」
「あんなお兄さんがいる未鷺様が羨ましい。大人の魅力だよね」
「在学中はアスカ様みたいなチャラい雰囲気だったらしいよー」

アスカって未鷺と噂になった奴か、と元秋は思い出した。
知的に見えた日鷹と二色の頭をしたアスカが結び付かなくて、首を傾げる。

考えているうちにあてられた部屋についた。
カードキーは同室者が持っているため、チャイムを鳴らす。

長い前髪で目が隠れた痩せた生徒がドアを開けた。
同室者の又出だ。
彼は元秋を怖がっているようだった。

「次何時からだ?」
「えっ……あ、あの……3時からです」
「……そうか」

怯えた様子で答える又出を見て、もう話しかけるのはやめようか、と元秋は内心で苦笑した。

元秋が時計を見てあと20分か、と確認したときチャイムが鳴った。

「元秋ー!俺だ!遊ぼうぜ!」

無駄にノックをしながら野原が騒いでいる。
出たくねえ、と思いながらも無視したら声が大きくなるだけとわかっているので、元秋は出てやった。

部屋にあがり込んだ野原はきょろきょろと視線を巡らせ、隅にいた又出に気付いた。

「元秋と同室なのか?お前名前は?クラスは?」

野原が畳み掛けるように問い掛けると、又出はふいと顔を背けトイレに入って行った。

「なんだ?あいつ。失礼だな!」
「人見知りなんだろ」

元秋は野原をなだめながら又出の前髪から覗いた睨むような目が気になっていた。
生徒会役員のファンで、野原が嫌いなのかもしれないと考える。

「つーかお前の同室者はどうしたんだよ」
「用意してるから後から来るって」
「来るってこの部屋にか?」
「うん!いい奴だぜ。或人っていうんだ」

元秋が確か野原と同室は、と思い出すのと同時にチャイムが鳴った。

「或人だな!」

野原が出て、入って来たのは元秋が想像した通りの姿だった。
地味な感じがするが端正な顔をしている。
元秋は三嶋或人というフルネームを初めて知った。

「君が鬼原君?初めましてー。俺三嶋或人です」
「……ああ、俺は鬼原だ」


或人は初対面を装うつもりのようだった。
元秋は訂正するのも面倒なのでそれに従った。

「もうそろそろ時間だね」

元秋からしたら胡散臭さ満載の明るい口調で或人が言った。

「勉強めんどくさいなー……」
「仕方ねえだろ。行くぞ」

又出は一緒に来そうにもなかったので、三人で部屋を出た。

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