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嫌な男


放課後、未鷺は一転して不機嫌だった。
委員長会議では司会進行をしながら靖幸は未鷺に視線を送っていた。

凄く色気がある、とこの学園では評される靖幸の目力は、未鷺には耐え難かった。
しかも予想通り、会議が終わると近寄って来た。

「久しぶりだな、未鷺」

竜ヶ崎靖幸は金髪と鋭い深緑の瞳をした誰もが認める男前だった。
髪は染めたものらしいが、クォーターの彼の顔立ちには良く似合っている。
線の細い未鷺と違って、程よく筋肉がついた男らしい体つきをしている。

未鷺も客観的に見て靖幸が整った顔をしているとわかっているが、だからと言って魅力を感じはしなかった。

「俺の部屋に来いよ。話でもしようぜ」

他の委員長達が赤面するほど甘い声で靖幸が囁いた。
未鷺は無表情で靖幸を見据える。

「生徒会長の仕事はそんなに暇なのか。俺はお前と話す時間があればひとつ書類を片付ける」

そのまま部屋を出ようとした未鷺の肩を、跡が残りそうな強さで靖幸が掴んだ。
振り返った未鷺は、先程までと全く異なる捕食者の目をした靖幸を見た。

「話があるのはお前の方だろ、なあ菖蒲未鷺?」

靖幸が未鷺をフルネームで呼んだのには理由があった。
菖蒲家と竜ヶ崎の微妙な関係性は、その息子にも大きく影響している。

「……離せ」

靖幸の手は案外あっさりと離れた。
未鷺の目に一瞬映った動揺に満足したようだった。

「俺は気が長くないってわかってんだろ」

微笑む靖幸が言いたいことはわかっている。
しかし未鷺は靖幸を一瞥すると今度こそ部屋を出た。
靖幸は追って来なかった。

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