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選別



未鷺の不安に反して、週明けの学園での生活は良くも悪くも普段と変わらなかった。

金井が学園からいなくなったのを噂で耳にしただけだ。

試験の答案が次々と生徒の手に戻って来て、週の半ばには上位30名の名前が廊下に張り出された。

未鷺は学年二位だったが、自分の名前の上に靖幸の名前があるのが気に入らなかった。

「未鷺が頭良いのは知ってたけど、こんなに良いとは思ってなかった」と元秋から失礼な電話がかかってきた。
そう言う元秋は24番目で特待生としても十分な成績だったようだ。

今、未鷺は風紀委員の仕事に追われていた。
予想以上に風紀委員補助への応募は多く、学生課から送られてきた生徒のデータと応募用紙を見比べるのにかなりの時間を要した。
特に応募が多かったのは、宿泊学習で未鷺と行動出来る二年生だ。

「狸谷正志」
「二年E組。違反は夜間外出と数回の遅刻。ハンドボール部」

未鷺が言った人物のデータを他の委員が読み上げる、という作業を繰り返す。
用紙は採用、不採用、保留の三種類に分けられている。

「補足、狸谷は菖蒲の親衛隊に入ってる」

未鷺は狸谷の用紙を保留に置いた。
未鷺の親衛隊員の多くが風紀委員補助に応募してきたが、自分の親衛隊ばかりを補助にしてはいけない。

「鬼原元秋」

未鷺は名前を読み上げるとき、口元がゆるみそうになったので咳払いをするふりをして拳を口に当てた。

「2年A組。違反は少し前の喧嘩だけ。総合格闘技と空手の経験者。親衛隊や部活には入ってない」

それを聞くと未鷺は元秋の用紙を採用の束に置いた。
贔屓をしているのではなく、基準を満たしているからだ。

「……山口野原。不採用」

未鷺は用紙にでかでかと書かれた野原の名前を見るなり、避けた。
彼のせいで苦労している他の委員たちも異論はないようだ。

「羽藤(うどう)みちる」
「二年C組。違反なし。親衛隊と部活にも入ってない」

問題ないようなので、みちるの用紙も採用の束に重ねた。

パソコンの画面に映るみちるの画像に見覚えがあるような気がしたが、未鷺は思い出すことは出来なかった。

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あきゅろす。
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