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一足早い発表


「おっ、入ってる」

郵便受けを見れば今晩もご丁寧に茶封筒が入っていた。

元秋は今朝のうちに、昨日の問題を回答して未鷺の部屋に届けていた。
『満点だったら褒美くれよ』とメモを添えて。

茶封筒を開いて見れば、新しい問題と、昨日の問題を採点したものが入っていた。

『この程度で満点を狙うつもりだったのか。基礎から見直せ』との辛口コメントから始まる長い解説付きで。

ひっでえ、と胸中で呟く元秋の頬はそれでもゆるんでいた。

テスト勉強をする必要がないとはいえ、風紀委員の仕事を抱える未鷺は自分の時間が少ないはずだ。
それを元秋のために使っている。

「ただいまー」

喜びを噛み締めていると、野原が部屋に戻って来た。

「おいもう12時過ぎてんぞ」
「大丈夫!慎一の部屋で遊んでたんだけど、慎一が送ってくれたから」

そんなところを親衛隊に見られたら一大事なのだが、元秋は注意する気も失せて、「そうか」とだけ返した。

「慎一が宿泊学習の部屋割のコピーくれたんだ!俺は三嶋って奴と同室なんだけど、元秋そいつのこと知ってるか?」
「三嶋?」

元秋はその名字に一人だけ心当たりがあった。
未鷺と同室の変態だ。

「いや、知らねえ」

野原に三嶋を説明する根気はなく、元秋は頭を横に振った。

「そっか。元秋は又出(またで)って奴とだぜ」
「そいつも知らねえ」

未鷺と同じ部屋だったら、という静かな期待は儚くも散った。
知らない生徒となる確率の方が高いので仕方ないが。

「慎一は未鷺と同室なんだって。いいよなー」

羨ましげにこぼす野原に、元秋は大きく頷きたい気分になる。
未鷺が既に知っているのかが気になったが、今は勉強に集中しなければいけない。

「もう部屋入っちゃうのか?もうちょっと話そうぜ!」
「俺は勉強」
「元秋は真面目なんだなー!俺なんて一回も勉強してないぞ」

と舌を出す野原を一瞥して、元秋は個室に入った。
未鷺が手伝ってくれるのだから、良い結果を出さなければ。

試験はすぐ近くに迫る。

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