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続・副会長の憂鬱


放課後、生徒会室には靖幸と慎一、双子が既に集まっていた。
密に胸を踊らせているのは慎一だ。
出校停止が解けて始めての平日。
野原が生徒会室に遊びに来る可能性は限りなく高い。

野原の訪問に備えて仕事してるふりは完璧だ。

ぎしりと生徒会室の重い扉が開く音。
野原か、と笑顔で顔を上げると、

「ちわーっす」

ツートンカラーの頭をした会計が軽薄な笑顔を浮かべひらひらと手を振りながら入って来る。
慎一と同じ考えだったらしい双子もパソコンを前にして残念そうな顔をした。

机についている他の役員を見回しアスカはけらけらと笑う。

「え?みんな真面目に仕事してんの?超ウケるんですけど」
「先輩が来ない間ちゃんとやってましたぁ」

すかさず空が答えるが、垂れ目を丸くしてアスカは首を傾げた。

「おっかしーな。最近みんな誰かさんに夢中で仕事やってないって聞いたけど」

言いながら自分の席につき、アスカは再び全員に視線を送った。
慎一はパソコンの画面に隠れて唇を噛む。
野原が来てもアスカがいたのでは思う存分構うことは出来ない。
むしろアスカに生徒会の実情をばらされるのではないかと気疲れする羽目になる。
今日は野原が来ない方が都合が良いかもしれない、と慎一が思い始めた矢先、ドアが開いた。

「野原」

空が入って来た野原に手を振る。

「ここに来んの一週間ぶりだな!」

来ない方が良い、と思ったが、やはり野原の笑顔に癒される。
何の思惑もなく懐いてくれる野原は慎一にとって太陽のような存在だった。

「来てくれたんだね。仕事もキリが良いところだしお茶にしようか」

慎一が席を立って言う。
しかしいつもなら喜んでくれる野原の返答がない。
野原はアスカに歩み寄っていた。

「キミだあれー?」

アスカは頬杖をついて座ったまま野原を見上げる。

「人に名前を聞くときは自分から名乗るんだぞ!」
「そうだねー、ごめん。生徒会室に一般生徒が入って来るからびっくりしちゃってさ。俺は静谷アスカ」
「お前がアスカか!俺は山口野原。未鷺の友達なんだ」

野原の名前を聞くとアスカはわざとらしく大きく頷いた。

「ああ、ヤマグチ君ね」
「アスカに言いたいことがあるんだ!」

野原はびしっ、と人差し指の先をアスカに突き付けた。

「何」

少し眉間に皺を寄せたがすぐに笑みに戻してアスカは続きを待つ。

「未鷺に、えと、変なことをするのをやめろ!」

きっぱりと野原は言い放った。
慎一も未鷺とアスカの噂は知っていた。
遠回しに表現しながらも少し赤面している野原は可愛いと思うが、さすがにアスカにこの言い方はまずい。
慎一が止めに入ろうと一歩前に出ると、靖幸が小さく「動くな」と命じる。
それに逆らうことが出来ず、慎一は歯がみする。

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あきゅろす。
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