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負けられない戦い2

電話に出た未鷺を元秋は黙って見ていた。
部屋を出るべきなのはわかっているが、誰からの電話なのか気になって仕方ない。
元秋を一瞥した未鷺にも気にした様子はなかったので、そのまま待つことにした。

「捻挫……そうか。……俺の食事のことは気にするな。購買で買えば良い。委員の仕事も治るまで休め……気にするなと言っただろう……ああ」

短い通話を終えた未鷺はふうと息を吐いた。

「風紀委員の奴か?」
「ああ。怪我をしたらしい。明日部活の試合だと張り切っていたのだが」

電話は佐助からだった。
未鷺に試合の観覧を誘った彼の嬉しそうな顔を思い出し、気の毒になった。
佐助が気にしていたのは未鷺の食事を作れないことと風紀委員の仕事のことだったが。

「やけにお前を気にしてるみたいだったな」

元秋が思ったままを言うと未鷺は眉間に皺を寄せる。

「何が言いたい」
「そいつ、お前が好きなんじゃねえだろうな」
「……?」

元秋に言われたことを噛み締めるように未鷺は首を傾げた。
佐助は良い後輩で信頼する風紀委員の仲間である。
それくらいにしか考えていなかった。

「佐助は佐助だ」
「そりゃそうだろうけどよ。つーか佐助っていうのかそいつ」

元秋が密に脳内の未鷺狙いリストに佐助をいれたのを、未鷺は知る由もない。

「シャワーを浴びてくる」
「おい俺まだイってねえぞ!」
「知るか。佐助を見舞いに行く」

布団で身体を隠したまま未鷺は部屋を出て行く。
やっと未鷺と会えるようになったのに、結局妄想でヌくしかないとは。

「あー絶対挿入てやるからな」

恨みがましく呟くと、ドアと壁の間から未鷺が顔を出した。

「何か言ったか」
「言ってねえからその変質者を見るような目はやめろ!」

納得していない顔で未鷺は今度こそ浴室に行った。
綺麗に片付いた未鷺の部屋に、元秋だけが残された。
未鷺の香りに少しばかり雄の匂いが混ざる。

今日の未鷺は嫌がりながらもフェラを受け入れてくれた。
積極性はゼロだが、とりあえず触ることは許して貰っているらしい。

「次はどうっすっかな」

少しずつ段階を踏んで行けば最後には、と元秋は計画する。

このまま未鷺がその気になってくれなければ、元秋は自家発電だけで性欲をやり過ごさなければならなくなるのだ。
元秋はごくりと息を飲む。

負けられない戦いがここにある。

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