五日目
金曜日の昼休み。
未鷺は嫌な人物と廊下ですれ違い、しかも呼び止められる、という災難に遭っていた。
「静谷と付き合ってるというのは本当か?」
噂には尾鰭が付き物だが、こうして嫌っている人物に直接尋ねられるのは気に食わない。
未鷺は足を止めると顔だけその男、竜ヶ崎靖幸を見据える。
「お前の知ったことではないが、俺は同性に恋愛感情を持たない」
「じゃあ体だけの付き合いか」
「ふざけるな」
靖幸と話しても無駄だと判断した未鷺は顔を戻し歩を進めた。
「自分の商品価値を下げるような真似すんなよ」
未鷺は背中にかけられた靖幸の言葉の意味がすぐに理解出来た。
自分が商品だとしたら買うのは間違いなく背後で嗤うあの男だ。
虫酸が走る。
放課後の未鷺はとにかくうんざりしていた。
視線を浴びるのはいつものことだがその後アスカの名前を出しこそこそと話す生徒が多い。
自分に手を出すようなことをしなかったアスカのことも侮辱されているようで気分が悪い。
風紀委員室で大半の時間を潰し、人目に触れないように過ごし、11時20分に出た。
或人から伝言で聞いた二年生との待ち合わせだからだ。
寮の二階の階段側廊下というとまず元秋の部屋を思い出してしまう。
そんな自分に呆れながら寮へ向かった。
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