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三日目3


未鷺は今日、校舎周辺の屋外の見回りをするらしい、というのは空が風紀委員の下っ端から聞き出した情報である。
死角になる場所では喧嘩や強姦、喫煙などの違反行為が起こりやすく、それを防止するためらしい。

腕に風紀委員の腕章をした未鷺が進む10メートル程後ろを、元秋と野原、双子はついて行っていた。

未鷺とすれ違う生徒は姿勢を正しつつ、ちらちらと視線を送っている。

元秋は未鷺を見て顔を赤らめる生徒を見て舌打ちした。
きっと未鷺は視線なんて気にも留めていないのだろうが。

未鷺は学内の自然公園へと足を向けた。
元秋が最初に未鷺と会話したところだ。

「あっ、誰かいる」

少し進んだ先に二人の人影が見えた。
野原が小声で言うと陸が木陰に野原を引っ張った。

「止まったぞ」

よく見れば生徒二人は紫煙をあげる煙草を持っていて、未鷺を見て顔を引き攣らせている。

学生証を提示させ煙草を没収する未鷺の横顔は冷たい。
それを凝視する野原はぐっと元秋の袖を掴んだ。

「なんだよ」
「未鷺、かっこいいな……」

惚けたように言う野原に元秋は眉を寄せた。
未鷺に対して野原が抱いている感情の種類が気になった。
思考は未鷺が踵を返したことで中断された。
ばれないよう隠れ、未鷺が通り過ぎてから十分な距離を保って再び尾行を開始した。

それから未鷺は誰も呼び止めることなく淡々と見回りをしていた。

「なーんか飽きてきたよね?」

ぽつりと空が口にすると野原は顔をしかめた。

「諦めちゃだめだろ!未鷺のことまだ全然わかってないぜ」
「後ツケるだけでわかる訳ないだろうが」
「じゃあどうしたらいいんだよ!」

野原に頬を膨らませて見上げられる元秋を空と陸は嫉妬のこもった目で睨んだ。
元秋は舌打ちして肩を回す。
隠れながら歩くのは疲れるものだ。

「どうする必要もねえだろ、お前には」
「未鷺、寮に入っていったぜ!」
野原は元秋を遮るように言って数メートル先の角を曲がった未鷺を注視した。

「……おい」
「未鷺が部屋に入ったら終わりにするよ!」

やっとこの尾行ごっこが終わると思うと元秋は仕方なく野原に続く。
未鷺はエレベーターに乗らず階段を上がった。
その足は未鷺の部屋がある3階で止まらず4階も過ぎた。迷いなく最上階の5階へ上がる足音がする。

「なんで菖蒲ちゃんが生徒会フロアに?」

空が訝しんで呟く。
未鷺が出て行ったのを確かめて元秋達は5階の踊り場に上がった。

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