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三日目


「ミサちゃーん。朝だよー」

甘い声で呼び掛けられ、未鷺は小さく呻いた。
重い瞼を開けばTシャツに短パンというラフな格好をしたアスカが枕元で優しく笑っていた。
未鷺は視線を動かし、まだぼうっとした頭で考えた。
ここはどこだろう、なぜアスカがいるのだろう、と。

「昨日、は……」
「激しくシたらミサちゃん意識飛んじゃってさぁ」
「……」
「ウソウソウソ!ミサちゃんが寝ちゃったから俺のベッドに運んだだけ!なーんにもしてないよ」

この世の終わりのような顔をした未鷺に慌ててアスカは弁解した。

未鷺も意識がはっきりしてきたらしく、上半身を起こすとアスカに頭を下げた。

「昨日は勝手に寝てしまい、すみません」
「いいんだよー。来てほしいって言ったのは俺だしね。良く眠れた?」
「はい」

未鷺は久しぶりにしっかりと睡眠をとった気がした。
壁にかかった時計は6時をさしている。

「ミサちゃん部屋に帰ったらシャワー浴びたりご飯食べなきゃいけないと思って早めに起こしたけど大丈夫だった?」
「はい。ありがとうございます」

ベッドから降りて未鷺は掛け布団を整える。
白い肌が窓から差し込む朝の光に当たって綺麗だな、としみじみ思いながらアスカは未鷺を眺めていた。

「ミサちゃん。寝に来るだけでもいいからまたおいでよ」

未鷺はアスカが何故自分を誘い、親切にしてくれるのかわからなかった。
それを口に出して言って良いのか戸惑っていると、アスカはくすりと笑った。

「俺がなんでこんなこと言うか理解出来ないみたいな顔してるねー」

無表情と言われる未鷺からアスカは感情を読み取るのが上手い。
彼が芸術家だからなのだろうか、と未鷺は訝しんだ。

「ねー、今晩は暇?夕飯一緒にどうですか。俺の簡単手料理だけどね。そしたら教えてあげる。ミサちゃんに優しくする理由」
「今晩……」

試合が次の日曜日に迫った佐助に夕食を作らせるのは悪いと思っていた未鷺は、アスカの誘いを魅力的に感じた。

「頂いて良いですか」
「来てくれたらまじ嬉しい」
「では伺います」

アスカの空気に流されることに、未鷺は心地良さを感じていた。
再びアスカに礼を言って、部屋を出た時にその理由を思いたつ。

アスカは昔の兄に似ている。

外見以外の何かが、未鷺に兄を無意識のうちに思いおこさせたようだった。

アスカに家族を重ねていたことに自分の弱さと申し訳なさを感じながら未鷺は自分の部屋に急いだ。

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