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二日目

火曜日の午後。

「こんちはー。鬼原君います――ぎゃっ!」

202号室の個室で課題プリントをやっていた元秋は、玄関から裕二の声が聞こえてきて手を止めた。
共有スペースには今日も慎一と空と陸が来ている。
裕二はそれに驚いたのだろう。

「ちょ、ちょっとちょっと鬼原!なんで副会長様と書記のお二人が」

逃げるようにして元秋の個室に飛び込んできた裕二は、目を見開いて元秋を揺さ振った。

「山口の課題を見てやるんだとよ」
「これは一大事だ早速記事にしないと」
「やめろ馬鹿」

手帳を取り出し素早く書き留め始める裕二を叩いて元秋はため息を吐いた。

「あっ記事と言えば。俺の書いたインタビュー記事読んだ?鬼原がかっこいい感じになってるでしょ?」
「余計なことすんな」
「えーっ?あれで鬼原ファン増えると思うけどな。強いし体を張って山口君を守る感じが」

確かにあの後誘われたが裕二を調子に乗らせるだけなので元秋は黙っておく。

「ねっ、鬼原。友達として聞くけど鬼原は山口野原が好きなの?」
「……馬鹿言うなよ。ただ部屋が同じだけだ」

特に今、元秋はあの騒動に動じず、生徒会と遊んでいる野原に呆れている。

「なーんだ。まあ鬼原は基本ノンケだもんね」
「……ああ」

未鷺が好きだからといってホモになったつもりはない。
未鷺を好きな時点でホモだと言われたらそれまでだが。

「元秋!友達が来たのか?」

元秋の思考を遮ったのは勢い良く開けられたドアだった。
裕二は目を丸くして入って来た野原とそれについて来た生徒会役員三人を見る。

「俺、山口野原って言うんだ。お前は?」
「早川裕二だよ」

慎一と空と陸に睨まれながら答えて、裕二は顔を強張らせた。

「じゃっ、鬼原。これクラスのお知らせプリントだから。俺帰るね」

かばんから出したプリントを元秋に押し付ける。

「えーっ、もう帰んのかよ。ちょっと話しようぜ」
「ごめん俺これから部活の集会!」

裕二は断るとすぐ部屋を出て行った。
世渡りの仕方をよく知った裕二は直感的にここにいてはまずいと思ったらしい。

残された元秋は「早く出て行け」という気持ちを込めて野原達を見たのだが、野原には通用しなかった。

「あれ?元秋課題進んでないな!俺はもう半分終わったぜ!」

机上を勝手に見た野原が胸を張るが、その進行状況が後ろにいる三人のおかげだということは火を見るより明らかだった。

「俺は自分でやってるからな」

元秋は皮肉を込めて言ったが、それに反応したのは慎一だった。

「野原は不当に処罰されたから手伝うのは当然だよね。野原を出校停止にするなんて菖蒲が考えてることはわからないよ」

慎一は悲しそうに眉を下げて野原の頭を撫でる。
そうされた野原は頭を横に振って笑った。

「俺なら大丈夫だよ!きっと未鷺はあの時いらいらしてただけだよね」

自分が罰を受けたのは未鷺の気分によるもの、と野原は信じているようだった。
元秋は顔をしかめた。

「菖蒲は生理だったんだろうよ」
「そしたら菖蒲ちゃん月一じゃなくていつもじゃーん」

陸が言うと空がくすくすと笑った。

「未鷺は本当の友情を知らないんだよ。俺が教えてやらないと……」

思い悩んでいるような真剣な顔で野原は顔で呟く。
元秋は嫌な予感がした。

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あきゅろす。
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