一日目5
未鷺はちらりと時計を見遣った。
アスカのペースに巻き込まれ時間を取ってしまった。
そろそろ風紀委員室に戻らなくては。
「風紀忙しいんだね?」
未鷺の視線を追ったアスカがさりげなく尋ねてきた。
「先月のまとめが少し。これで失礼します」
「お疲れ様ー。ミサちゃんともっと話したかったな」
俺生徒会で孤立してるからー、とアスカはわざとらしい泣き真似をする。
「良かったらだけどさ、ミサちゃん俺の部屋遊びにおいでよ、ね?」
未鷺は真意がわからずアスカを見つめる。
話をして楽しいタイプではない、と未鷺は自分を評価していた。
「あっ、もちろん変なことしようとか考えてないよ。ミサちゃんがしたいなら喜んでするけど。ただ、俺の絵のモデルになってほしいなって」
未鷺はやや考えたが、断る理由は特に見つからなかった。
「……風紀の仕事の後で良ければ」
「やった!今日は俺もやることあるから明日でいい?」
「はい」
「やべー嬉しー。俺の部屋501号室ね。よろしく」
そう言って笑ったアスカの笑顔はいつもよりも幼くて自然だった。
風紀委員室に戻る頃には未鷺の心は少し軽くなっていた。
「菖蒲先輩顔色良くなりましたね」
「お前の気にし過ぎた」
「菖蒲先輩のことはなんでも気になるんすよ!」
「つまらないことを気にしている暇があったら仕事しろ」
「はい……」
佐助を注意しつつ未鷺は自分の仕事を始めた。
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