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一日目4

「静谷先輩は山口に会ったことは」
「ないよ。噂は聞いてるけど」

答えながらアスカは自然な動作で来客用の椅子を引いて未鷺にすすめた。
未鷺は風紀委員室に戻らなければと思うが、笑いかけられると腰を下ろしてしまった。
アスカは向かいに座る。

「俺はヤマグチ君に興味ないんだよねー。ぼさぼさ頭に瓶底眼鏡なんでしょ。よくそんな格好で人前に出られるよね」

俺なら絶対無理、とアスカは笑う。

「会えば変わるかもしれません」
「へ?」
「山口に会ったら」

未鷺は自分でも何でこんなことを言ったのかわからなかった。
しかし野原が副会長や書記二人、爽太や金井に特別な感情を持たれているのだと未鷺は知っていた。
もしかしたらいずれ元秋も、と思うと胸が痛くなる。

「……ヤマグチ君はどーでもいい。少なくても俺はあいつらみたく仕事ほっぽってヤマグチ君と遊ぼうとは思わないよ」

遊び人に見られがちなアスカが生徒会室に来なくても会計の仕事をこなしてることを未鷺は知っている。
アスカが本心を語ってるのだ、とわかった。

「静谷先輩の仕事ぶりは知っています」
「俺は与えられたことをやってるだけだもん。ミサちゃんは自分で動いて風紀を引っ張ってるでしょ。感謝してるんだよ。風紀が頑張ってくれてるおかげで俺のセフレちゃん達がゴーカンされたって泣きついて来ることがなくなってさ」

感謝してる。
風紀の仕事について未鷺がそう言われたのは初めてだった。
加害者に恨まれたことはあったが。

「制作が終わって余裕出てきたしこっちにも顔出すから俺のこと使ってね」
「制作?」
「うん。俺美術部部長なのね実は」

未鷺には初耳だった。
忙しい生徒会に加えて部長までやっているアスカに恐れ入る。

「意外?」
「……いえ」
「ふふっ、そう。ミサちゃんは可愛いね」

慌てて頭を振る未鷺を見てアスカは目尻を下げた。
可愛い、という言葉で未鷺は金井との出来事を思い出す。

「先程『可愛くない』と言われましたが」
「それは見る目ないんだね。校内有数のモテ男の俺が言うんだから間違いないよー。ミサちゃんは可愛い」

女扱いされているようで嫌いだった言葉は、アスカが言うと不思議と温かい。

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あきゅろす。
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