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一日目



202号室の固定電話に学生課から連絡が来たのは翌日の日曜日だった。

五日間の出校禁止と寮内謹慎、食堂の出入り禁止が処罰の内容だった。
生徒会の嘆願により、処罰が二日減らされたらしい。

元秋と野原には、クラス委員によってたくさんの課題プリントが手渡された。
授業に出ない分、この課題に追われることになる。



出校禁止一日目の月曜日。
元秋は殴られた頬の腫れもだいぶひいてきて、個室の机に向かっていた。
A組の元秋の課題プリントは、D組の野原と難易度が違った。
本気でやらなければ間に合わない量である。

「野原、会いに来たよ」
「課題手伝ってあげるー」

共有スペースが騒がしくなる。
試験さえ受かれば授業に出なくても良い生徒会役員が午前からやって来た。

「本当か?!この課題難しいんだよ」

野原は大歓迎のムードだ。
煩くて仕方ないが、校舎への立ち入りが禁止されている今、ここ以外で課題をやれそうな場所はない。

舌打ちしてプリントにシャーペンを走らせた。




午後、元秋は一人で学園内のスーパーに来ていた。
食堂に入れないので、食べる物を適当に買って置こうと思ったのだ。

ふと、スーパーの前に掲示された学園新聞に目が留まる。
『目撃者が語るあの事件の真相とは?!』という見出しがでかでかと踊っている。
そしてその下には元秋の写真。

元秋は思い切り眉間に皺を寄せると初めて学園新聞を読んだ。

『土曜日に起こった喧嘩の真相は?喧嘩を目撃し、風紀委員に通報したA君を新聞部が独占インタビュー!

記者:どこで事件を目撃したんですか?
A君:西校舎の2階です。理科室に筆箱を忘れて、取りに行った帰りに窓の外を見たら、鬼原君が大勢に囲まれていました。
記者:それを見てどう思いましたか?
A君:最初は鬼原君が全員のボスだと思ったんです。鬼原君が一番恐かったので。だけどSさん達がみんな鬼原君に殴り掛かっていったので、これは6対1の喧嘩なんだな、と思いました。
記者:その後どうなりました?
A君:鬼原君がすごく強くて、勝ちそうだったんです。だけど山口君がやって来て、人質にされました。その後は鬼原君は抵抗しないで殴られていました。風紀委員の菖蒲さんが来て、喧嘩は終わりました。

菖蒲様は喧嘩に関わった全員に七日間の出校停止処分を命じたが、生徒会の皆様の嘆願により、山口君と鬼原君は二日間減免されている。

記者・早川裕二』

裕二お前かよ、と元秋は頭を抱える。
見なかったことにして元秋はスーパーに入った。
心なしかいつもより生徒達の注目を集めている気がする。
手早く必要な物をカゴに入れて会計をすませ、袋に詰め込んでいると、後ろから話し掛けられた。

「鬼原君ですかぁ?」

振り返ると立っていたのはなかなか可愛い顔立ちをしている三年生だった。

「そうだ」

全く話したこともないような生徒だったので、元秋は訝しんだ。

「僕、背の高い人がタイプでー。鬼原君かっこいいなって思って」

そう言って上目遣いで見てくる三年生に、誘われているのだ、と元秋はわかった。

「よかったらお部屋に行かせてもらえませんかぁ?」

甘ったるい口調と視線を浴びて、元秋は苦笑する。
未鷺に出会う前はそこそこ可愛い顔をしたやつに誘われたら迷わず抱いていたのだが。

「悪いな。抱く気はねえ」
「……やっぱり山口野原が好きなのー?」

自信があったのだろう。
断ると三年生は不機嫌をあらわにした。

「山口は関係ねえよ」

今、元秋が抱きたいのは未鷺だけだった。
納得しているようなしていないような顔で去る三年生を置いて、元秋は寮に戻った。

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