夜の訪問
五月末――。
未鷺は元秋の部屋に入り浸っていた。
「お前なぁ、夜中来んのはいいがお触り禁止は拷問だろーが」
学生寮は生徒会役人や学年首席を除き、二人部屋がほとんどだったが、元秋は同室者が長期留学のため一人で部屋を使っていた。
風紀委員の未鷺は週に二度の夜の見回りを終えると元秋の202号室を訪ねて来る。
「もっと健全な思考を持て」
おまけに未鷺は風呂まで借りていく始末だ。
透き通るように白い肌に黒髪が張り付くのがなまめかしい。
薄い唇がいつもより色づいているのも。
良く我慢している、と褒めてほしいくらいだと元秋は思う。
未鷺は同室者が気に入らないらしく、自分の部屋にいるのを嫌った。
「健全な男子高生がエロいこと考えるのは当然だろ」
「俺は考えないが」
「医者にかかれよ」
こうした生温い関係が続いて一ヶ月半が経つ。
元秋は自分でも認めるしかないほど未鷺に夢中だった。
見た目がタイプなのもあるが、強面な自分に臆しないところや、仕事熱心なところ、繊細なのに芯がしっかりしてるところなど、好きなところを上げたらキリがなかった。
「お前ちゃんと答えろよ」
「……何がだ」
「わかってるくせにとぼけんな」
何度も元秋は未鷺に本気の告白をしている。
強面で決して美形ではないが男らしい元秋はそれなりに女にもモテた。
中学で付き合った女にも言わなかったような言葉で未鷺を褒めて好きだと伝えた。
しかし未鷺は返事することをを渋り続けている。
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