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未鷺の不安



「佐助、メールの着信拒否の設定はどうするんだ」
「メールの着信拒否?受信拒否ですか?」
「それだ」

風紀委員室で朝食をとり終わった未鷺は、携帯を片手に佐助に尋ねた。
既に何人かの委員が仕事を始めている。

「迷惑メールとかっすか?携帯貸してくれたら俺がやりますけど」
「迷惑メールではない。やり方がわかれば自分でやる」
「菖蒲先輩に受信拒否されたらショックっすよねー」

佐助が知らない誰かに同情しているのを見て、未鷺は複雑な心境になった。
佐助が指示する通りに操作し、元秋のアドレスを受信拒否にする。
電話は既に着信拒否にしている。
昨日、元秋から逃げた理由を追及されたくなかった。

「佐助」
「なんすか?」

携帯を操作し、視線は画面のままで未鷺は続ける。

「恋愛感情はすぐに他の相手に移るものか」
「へっ?!れれれ恋愛感情……。俺の場合は好きな人にはずっと一途っすよ!」
「誰もお前のことは訊いていない。俺が訊いたのは一般的に、だ」
「ああ……そうっすか。人によると思いますよ。熱しやすく冷めやすいって人もいますからね……」
「そうか」

携帯を見つめたままの未鷺は佐助がふらっとデスクの方まで歩いて行ったことにも気付かなかった。

「菖浦」

二年生の委員が話しかけてきて、未鷺は携帯を閉じる。

「なんだ」
「佐助がかなり落ち込んでたけど何かあったか?」
「?何も」

未鷺は思いあたることがなかったので頭を横に振った。
それと、とその委員は続ける。

「昨日の夜、うちのクラスにいる鬼原って奴が、『山口の関係で菖浦に呼ばれてる』からって居場所を聞いてきたんだ。菖浦は忙しいから夜中まで風紀委員室にいるって答えといたけど大丈夫だったか?」
「……問題ない」

わざわざ風紀委員に訊いてまで元秋が自分に会おうとしていたことを思うと、未鷺は嬉しいような、胸が痛くなるような、複雑な感じがした。

「山口野原にムカついてる親衛隊が鬼原を標的にするかもしれないよな。鬼原には会えたか?」
「会った」

野原といる時間が長い爽太と元秋のうち、爽太は親衛隊持ちなので制裁を受けることはないだろうが、元秋は違う。
あの外見のおかげで標的にされない可能性もあるが、親衛隊は未鷺にも予測出来ない行動をとることがある。

「クラスが同じなら鬼原に気を配っておけ」

未鷺にはそう指示を出しておくことしか出来なかった。

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あきゅろす。
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