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生徒会の皆様



やたら美味い紅茶を飲みながら元秋は考えていた。
どうしてこうなった、と。


未鷺に会えなかった次の日、元秋は放課後までは平穏な時間を過ごしていた。
昼は購買で買ったパンを一人で食べるのが日常で、それが気楽だった。
昨日の食堂であったような騒ぎは正直こりごりである。

一人の時間を悠々と過ごしていた元秋の平凡な幸福は、放課後簡単に崩壊した。

「元秋!生徒会室行こうぜ!」

A組の教室の入口で元気よく声をかけてきた野原。
生徒会室、という言葉に反応して生徒達はざわめく。
新聞部の裕二だけが冷静にメモをとっている。

「お前、橋本に注意されただろうが」

昨日親衛隊の恐ろしさを教えられたばかりだというのにこれだ。
元秋は頭を抱えたくなった。

「大丈夫だよ!慎一に誘われたんだ。それに爽太も一緒だよ」

爽太は野原の死角から元秋を睨み付けている。
爽やか代表の爽太が陰湿に見えた。

「仕方ねえか……」

野原の暴走は爽太だけでは抑えられない。
元秋は渋々野原に同行することにした。



そして今、来客用ソファーには慎一、野原、爽太、テーブルを挟んで向かいのソファーに陸と空、靖幸が並んでいる。
元秋は一人掛けの椅子を慎一に笑顔で勧められ、座っている。

生徒会への憧れなど全く持っていない元秋でも、全員が美形という景色に萎縮しかけた。
野原の隣は死守した爽太でさえも、顔面をひきつらせている。

野原は陸と空とも打ち解け、靖幸には警戒しながらも自分から話しかけている。

帰りてえ、と元秋は切実に思った。

ふわぁ、と大口を開けてあくびした野原の頭を撫で、慎一は顔を覗き込んだ。

「眠いのかな?」
「うん、ちょっと……。昨日の夜元秋と爽太と話してたからかな」

眼鏡がずれているのに気付いているのかいないのか、野原を目を擦った。

「僕の肩を使って寝てもいいよ」

優しく野原の頭を引き寄せると、慎一は笑みの消えた暗い瞳で元秋を睨んだ。
売られた喧嘩は買わずには入られない元秋は、にやりと笑みを浮かべ睨み返す。
物心ついたときから顔の怖さでは負けたことはない。
慎一は一瞬怯んだ様子で顔を反らした。

「あー。慎ちゃんずるい!野原は僕の肩で寝てよ」

空は頬を膨らませる姿が似合い過ぎている。

「慎一調子乗ンなよ」

陸が空に続いた。
何か言いかけた爽太は諦めて口を閉じた。
このヘタレめ、と元秋は胸中で罵った。

生徒会役員が野原の取り合いに夢中になっていると、生徒会室の扉が外からノックされた。

「慎ちゃん出てよ!」
「そう言う空が出てはどうですか?」
「空に何言ってんだてめェ」

元秋は下らない争いで待たされている生徒会の客を気の毒に思った。

「おい」

腕を組んで座っていた靖幸が顎で爽太を差す。
学園のトップに話しかけられた爽太は動揺しながら自分を指差した。

「そうだ。お前だよ。お前出て来い」

生徒会の前ではその男前を霞ませて、大人しく爽太は従った。

ドアを開けて、はっと息を飲む。

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あきゅろす。
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