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202号室の変化



「それが生徒会と仲良くしちゃいけない理由だなんて俺は認めない!」

202号室の共有スペースには元秋と野原と野原に会いに来た爽太がいた。

「でも、生徒会に関わると親衛隊の制裁を受けるんだよ?学園で平和に過ごすためには人気者に近付いちゃいけないんだ」

そう言う爽太も親衛隊を持っているのだが。

「慎一があんなに無理して笑っているのは親衛隊がいるからなんだな……。他の生徒会のみんなも、本当は友達が欲しいに決まってる!」
「だからね……、」

同じ話を繰り返す野原と爽太にとっくに飽きた元秋は、先程から何度も時計を見ていた。
もうすぐ未鷺が夜の見回りを終えて来る時間である。
それまでには爽太が帰るかと思っていたが、規則で決まっている時間になっても動く気配はなかった。

「あと、菖蒲未鷺にも近付かない方がいいよ」

爽太が発した言葉に、元秋は飲んでいた緑茶を吹きそうになった。
素知らぬ顔をしながら聞き耳を立てる。

「なんでだよ!」
「菖蒲未鷺はある意味生徒会役員よりもタチが悪い。親衛隊は穏健派だけど、アンチもいるから」
「アンチって?」
「菖蒲未鷺に罰則を与えられた生徒とか、その友達だよ。あの人、風紀委員を改革して強姦発生数を少なくしたけど、退学者とか停学は増やしたから」

元秋は未鷺の厳格さを思い出して苦笑する。
未鷺を恨んでいる生徒がいても仕方ないだろう。

「それならよけい未鷺を一人にしておけないだろ!未鷺を守ってあげなきゃ可哀想だよ」
「あの人は十年くらい合気道やってるらしいし、一人でどうにか出来るんじゃない?俺が心配なのは――」
「友達だもん、一人になんてしておけないよ!」

爽太を遮って野原はぐっと拳を握った。
元秋は首を傾げる。
いつの間に未鷺は野原と友達になったのだろうか。

「野原。本当にあの人はやめるべきだ。すごく冷たい人なんだよ」

爽太の目のは嫉妬で燃えていた。
野原が未鷺を庇うのが気に入らないのだろう、と元秋は思う。

「そんなことないよ!」
「あるんだよ!菖蒲未鷺は一年生のとき自分の親友を退学にしてる。これは有名な話」
「……なんで退学にしたんだよ」

元秋は思わず口を挟んでいた。
未鷺について自分より詳しい人がいるのが嫌だった。

「知らないよ。風紀委員が内緒にしてる。平凡な家庭の親友を菖蒲未鷺の家が認めなかったって噂だけど」

素っ気なく爽太が答えた。
野原は唇を強く結んで何か考えているようだった。

元秋はちらりと時計を見る。
午前一時を過ぎていた。
きっと今日はもう未鷺は来ないのだと思うと、同室者とその友達を少し疎ましく思った。

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