風紀委員のお仕事2
それは笑顔というには薄すぎる表情だったが、春也を驚かせるには十分だった。
「お前が叫んだおかげで風紀委員に通報するものがいた。礼を言う」
「い、いえっ」
春也は犯されそうになった恐怖を忘れて未鷺に見入った。
傍で見ると何倍も美しい。
「寮まで送りたいが俺といると妙な噂を立てられるかもしれない。下の階まで送ろう」
「ありがとうございます」
未鷺といると何か風紀委員に世話になることがあったのかと邪推されるのは必須だった。
春也の見た目なら事実に近い推測をされてしまうだろう。
二人で音楽室を出ると、生徒は誰も歩いていなかった。
授業でもあまり使われない第三音楽室を含む特別教室周辺は、放課後になると閑散としている。
「なぜお前がここにいる」
だからこそ、靖幸が階段の踊り場で壁に寄っ掛かっているのを未鷺は不審に思った。
「偶然通りかかってな」
余裕綽々な顔でわかる嘘をつく靖幸を、未鷺は鋭い目で睨んだ。
未鷺には靖幸が何を考えているのか全くわからなかった。
「生徒会長とはいえ不審な行動をとるなら容赦はしないぞ」
校内の人気トップ2が対峙している空間に春也は戸惑うだけだった。
「へぇ、尋問ならお前にされたいな」
「黙れ」
ふざけた調子で話す靖幸から視線を離すと、未鷺は春也を一瞥して階段を下った。
慌てて春也はそれに続いた。
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