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初対面


元秋が部屋に入ると玄関に知らない靴が置いてあった。
部屋の電気はついているが、物音はしない。
転入生が個室にいるのだろうと思い、冷蔵庫に買って来た食材を入れると、夕飯の前にシャワーを浴びてしまおうと思いたつ。

ついでに買って来たばかりのシャンプーとトリートメントを風呂場に置いてしまうことにした。
いつものようにシャワーを浴びて頭を洗ったところで前のシャンプーが切れていることに気付く。
まさか自分が先に使うことになるとは、と苦笑しながら高いシャンプーを使った。
上品な甘い香りは未鷺にきっと合うだろう。

風呂から出て水を飲んでいると、ソファーで動く何かに気付いた。小柄な少年が眠っていた。

黒いボサボサの髪はかつらのようで、すっかりずれてしまい、中から明るいストレートのストロベリーブロンドが覗く。
瓶底眼鏡がずり落ち、長い睫毛が瞼を縁取っているのがわかる。

変装ならきちっとやれよ、と思うものの、元来世話好きな元秋は少年に自分のブレザーをかけてやった。
そのきぬ擦れの音でぱちっと少年は目を覚ました。

「あっ」

慌てた様子で眼鏡をかけ直した少年はにかっと笑った。

「お前が元秋か?」
「ああ」
「俺は山口野原だ!よろしくな!」

男にしたら小さな手が差し出された。
元秋は野原の勢いにおされながら大きい手を重ねた。

「元秋って大きいんだな!」
「まあな」

強面で大柄な元秋は不良どころが堅気でない人に見える。
そんな元秋に普通に話し掛けてくる野原は貴重だった。
同室者に下手に怯えられるよりはよかったと思った。

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あきゅろす。
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