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新しい友達


最近元秋が部屋にいることが少なくなって、野原は退屈していた。
そんなときに出会ったのが、地味な眼鏡をかけて長い前髪をした一年生、亮(りょう)だった。
彼が話しかけてきたのが友達関係の始まりだった。

野原は無意識のうちに華やかな生徒を友達にしていたが、亮といるのも落ち着けて楽しいと思った。
亮の一番良いところは愚痴をきいてくれるところだ。

「――それでさー、未鷺は俺がせっかく誘ってやってんのに冷たいことばっかり言うんだぜ?おかしいだろ?」
「そうですね、野原先輩のお誘いを断るなんて」
「だろ?!やっぱり未鷺はどっかおかしいところあるよな?何か昔嫌なことでもあったのかな?それがわかれば俺が癒してあげられるのに……」

未鷺が微笑んで、「野原ありがとう。お前のおかげで大切なことがわかった」と言う妄想が、野原の頭の中で繰り広げられた。

「僕聞いたことありますよ」
「え?!未鷺のことか?!」
「はい」

妄想に割って入った亮の声に、野原は食いついた。
亮の両肩を掴んで、「教えて!」とねだる。

「菖蒲先輩は去年自分の親友を退学させたらしいです」
「それ聞いたことある!」

以前、爽太に教えられたことがあった。
それにより未鷺は冷血だとか薄情だと言われ、畏怖の対象になった。

「菖蒲先輩はその親友とまだ和解していないから、友達という関係を上手く築けなくて、野原先輩にもきついことを言うのかもしれませんね」

亮の言うことは野原にはもっともなように聞こえた。
そして、野原は自分がすべきことを見つける。

「……匠さんに頼んでそいつを呼んで貰えばいいかな。亮!その退学した奴の名前わかるか?」

大きい独り言の後、野原は亮の肩を掴んだまま尋ねた。

「確か、錆名誠っていう人です」
「錆名誠……」

野原は忘れないようにその名前を繰り返した。
さっそく、自分の叔父であり鳴鈴学園理事長である鳴宮匠に頼んでみようと思った。

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あきゅろす。
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