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おかしな話


大小様々な靖幸の写真が飾られた部屋で、翼は机に頬杖をついて嘲るような笑みを浮かべた。

「滑稽な話だよね?世界に羽ばたく竜ヶ崎グループの次期会長の竜ヶ崎靖幸様が、風紀委員でもないのにメーリスに登録して、菖蒲未鷺が出動するとき必ず無事かどうか確かめに行ってるなんて。誰からも憧れられて求められてるあの人が。菖蒲未鷺は感謝するどころかそんなこと知りもしないのに」

部屋には翼の他に、政田という印象が薄い少年がいたが、翼の言葉は独り言のようだった。

「気に入らないんだよ。最近靖幸様の親衛隊内にある、菖蒲未鷺だったら仕方ないみたいな風潮が。靖幸様に相応しくないのに近付く奴を廃絶するのもいいけど、僕らにとって本当の敵はどう考えても菖蒲未鷺でしょ?最終目標は靖幸様を手に入れることなんだから」

綺麗な顔を歪めて翼は頭を抱える。

「どうすればいい?菖蒲未鷺のあの外見をボロボロにしてやってもいいけど、そんなことをして菖蒲家が動いたら僕が危険。それに靖幸様が外見に傷が付いても菖蒲未鷺への執着をやめなかったら元も子もない」

彼は頭に浮かぶ言葉を吐き出し続ける。

「大勢に犯させて心の方に傷でも負わせる?そうすれば学校をやめてくれるかな」

自分の考えを拒絶するように翼は頭を振った。

「でも退学だけじゃ手温い。菖蒲未鷺が靖幸様の前から完全に消えないといけない。誰かが誘拐してくれたらいいのに」
「翼様」

無言で聞いていた政田が口を開いた。

「それについては心当たりがあります」
「どういうこと?」

翼はこの部屋に来て初めてその瞳に政田を映した。
政田は淡々と説明する。

「昨年、菖蒲未鷺が親友を退学させたのを覚えていらっしゃいますか」
「覚えてるけど、それが何?」
「退学した生徒は錆名誠。退学の直接的なきっかけは菖蒲未鷺の誘拐未遂です」
「詳しく聞かせて」
「不確定な情報ですが――」

政田の説明が終盤になるにつれ、翼の頬は緩んできた。

「面白いこと思いついた。上手くいけば菖蒲未鷺を処分出来るし、失敗してもうざったい山口野原が消えるかもしれない」

翼は夢を見るような顔で微笑んだ。

「靖幸様を早く僕のものにしなくっちゃ」

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