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新しい舞台



「号外ー!号外だよ!投票の結果、生徒会会計は或人様に決定!」

二日後の放課後、元秋は廊下で新聞を配る裕二に出くわした。
微笑む或人の横顔の写真が印刷されたその号外を、生徒達が競うように取って行っている。

「おい、一枚くれよ」

元秋が手を差し出すと、裕二は驚いた顔をしながら号外を渡した。

「鬼原が新聞に興味を持つなんて?!まさか或人様ファンなの?!」
「ちげえよ」

裕二を軽く受け流して、元秋は寮に向かって歩きだしながら紙面を眺める。

『わずか12票の差で爽太様落選……!新会計はあの人!』

その見出しから始まる記事を最後まで読んでいくと、おまけのように新委員長の名前が並んでいた。

『風紀委員長:菖蒲未鷺』

そうなるだろう、とは思っていたが、こうして見ると妙な実感が沸いた。
元秋は、未鷺と会う時間が減らなければいいけどよ、と胸中で呟く。
一番のライバルは風紀の仕事かもしれない。
そう考えて元秋は苦笑した。





或人は大きく深呼吸してから生徒会就任式が行われる講堂に足を踏み入れた。
本番の前にリハーサルをするので、広い講堂には生徒会役員と理事長、教頭だけがいる。

「アル」

最初に或人に気付いた空が迷ったような顔をした後、天使のように微笑む。

「ずいぶん遅いんじゃないのー?」
「ごめん、遅刻!」

えへ、と笑って或人は舌を出した。
固い表情をしていた陸は、眉間に皺を寄せたまま、或人を睨んだ。

「もう逃げンじゃねェよ、アル」
「うん、わかってる」

力強く或人が頷けば、本当かよ、と陸は口の端を上げた。

「アルも来たことですし、リハーサルを始めましょうか」

完璧な王子スマイルで慎一が促すと、理事長の鳴宮匠(なるみやたくみ)はマイクの方へ歩き出した。

或人はちらりと靖幸の様子を伺った。
いつもと同じ余裕の表情で悠然と脚を組んで座っている。

今度は靖幸に何を言われても揺るがない。
そう心に決めて或人は新しい舞台に立った。

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