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復活


あれ、俺寝てたんだっけ。

目を覚ました或人は自分がベッドにいることに気付いてまだぼんやりしている頭を無理矢理回転させた。

そして未鷺と再び友人関係に戻れたことを思い出し、じんわり胸が温かくなるのを感じる。

もう二度と未鷺には言えないと思っていた「好き」を伝えられた。
また会話が出来る。
それで十分だ。

時計は早朝の4時をさしていたが、或人はすっかり目が覚めてしまった。
ふと思いたって、机の横の引き出しをがらりと開ける。
中学生のときに外国から輸入した強力なヘアカラー剤が一箱残っていた。
中等部の頃の或人は目立ちたかったため、髪を派手なピンクに染めていた。
今の髪は三年生で生徒会を引退する時に黒染めしてそのままだ。

或人は意気込んでカラー剤を掴むと洗面所に向かった。





一時間後、或人は洗面所の鏡の前に立ち、鮮やかに染まったピンクの髪をドライヤーで乾かしていた。
本当の自分に戻った気がした。

「うん、やっぱり俺って男前」

何となく気分が高揚して思わず呟いた。

「三嶋?」

リビングの方から未鷺の声がして、恥ずかしい独り言が聞こえたのかと或人は焦った。
しかし、ドライヤーの音に紛れて未鷺には聞こえなかったようで、安心する。
或人はドライヤーを置くと、返事代わりにドアを開いて笑った。

未鷺は或人の髪色を目にすると、驚いた様子もなく微笑んだ。

「三嶋にはそれが一番似合ってる」
「かっこいい?」
「今まで見たお前の中では一番だ」

未鷺の褒め言葉はいつも或人の何よりの自信になった。

「そっか」

或人は大きく頷いて個室に戻ると、携帯のアドレス帳で久しぶりの名前を開いた。
まだ朝早過ぎる時間だが、居ても立ってもいられず、電話をかける。
相手は5回目のコールで出た。

「もしもし、小牧君?ずっと俺の親衛隊長でいてくれてありがとう。久しぶりの電話なのにお願いで悪いんだけど、俺、生徒会に戻ろうと思うんだ――」

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あきゅろす。
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