決断力不足
2年D組の教室に野原の高い声が響いていた。
「ね、ね、いいだろ?爽太が生徒会に入ればもっと一緒に遊べるぞ!」
「そうだな、そうだけど……」
煮え切らない返事をして、爽太は口ごもった。
自分が生徒会に選出されることを考えてなかったわけではないが、現実味を帯びてくると怖じ気づいてしまった。
「陸と空が爽太がいいんじゃないかって言ってたんだ!二人ともいい奴だからすぐに仲良くなれるぜ!」
「でも、会計の仕事出来るかな」
「アスカがやってるんだぜ?爽太にだって出来るに決まってる!」
野原にそう言われるのは嬉しいが、爽太には自信がなかった。
静谷アスカは遊んでばかりなのに成績が良いという評判だ。
「俺はサッカー部にも出たいんだ」
以前は野原に構い過ぎて疎かになっていたが、爽太はやはりサッカーが好きで、最近は部活にきちんと参加している。
生徒会で忙しくなったら両立は難しいだろう。
「大丈夫だよ!靖幸なんて親の会社の仕事しながら会長やってんだぜ!」
大丈夫、と野原に弾けるような笑顔で言われると、信じたくなってくる。
生徒会役員になれば他の役員と対等になって、野原ともっと親密になれるだろうか。
爽太の心は揺れ動いた。
「少し考えてみるよ」
無理だと思ったら親衛隊に頼んで爽太に投票しないよう働きかけてもらえば良い。
それをしなければ爽太は自然に生徒会に入ることになるだろう。
「期待してるぜ!」
爽太は無垢で可愛い野原を落胆させたくなかった。
誰かに生徒会入りの方向へ、背中を押してもらいたくなった。
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