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ミスコンは優勝が未鷺、2位が翼で、みちるは4位入賞を果たした。
授賞式の舞台で、入賞した五人の前に生徒会役員が一人ずつ並ぶ。

優勝した未鷺の前には当然靖幸が立ち、何食わぬ顔で未鷺の頭にティアラを嵌めた。
未鷺も表情を変えないように努めた。

観客の中に目立つ長身の元秋と目が合う。
心が休まる気がして見つめ続ければ、元秋が手で電話の形を作って耳に当てる仕草をした。
『後で電話する』という意味だ。

携帯は風紀委員が学生課で見つけ、未鷺に届けていた。
未鷺はさりげなく頷いて司会が進行するのを聞き流していた。

「未鷺君は誰と撮りますか?」

ずい、と目の前に出されたマイクに未鷺は目を見張った。
話は聞いていなかったが、入賞者は記念にツーショットの写真を撮る、とみちるが言っていたのを思い出す。
未鷺は迷った末、

「樋上佐助と」

と答えた。
隅の方で朗らかな顔で未鷺を見ていた佐助は「うぇえっ?!」と奇声を発した。
未鷺と喋り通しだった佐助はまだ婦警の格好のままである。
ミスコン実行委員に促されて赤面しながら舞台に上がる佐助に、申し訳ないと思いながら、未鷺の頬は緩んでしまう。

「菖蒲先輩、笑いましたね」
「悪い。笑った」

翼は当然靖幸を、3位の生徒は緊張の面持ちでアスカを指名した。
4位のみちるにマイクが向けられたとき、未鷺は意識せずにはいられなかった。
元秋の名が呼ばれるのだろうか、と。

「菖蒲未鷺さんと撮りたいです」

満面の笑みでみちるは答えた。
可愛らしいツーショットになりそうですね、と司会がコメントするのに、「もちろん」と弾んだ声を上げた。

予想外に安心している自分に気がついて、未鷺は胸中で自嘲する。

元秋と自分以外の誰かが並んでいる姿を見たくないなんて――

もうそろそろ認めなければいけないのかもしれない、と学園祭の最後の喧騒の中で思った。

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