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ある疑惑


出番を終えた未鷺はミスコン実行委員がいれた緑茶を飲みながら、仮設テントの下で休んでいた。

緑茶のおかげか目が覚めてきて、俺はなぜ出場したんだ、と着替えぬままの自分の格好を恥じる。
しかもちょっときつくて息苦しい。

他の出場者も同じようにあちこちで休憩をとって、結果発表を待っていた。

「菖蒲先輩!」

どたどたと砂埃を立てて凄い剣幕で走って来たのは婦警姿の佐助だった。

「良かった!無事だったんですね!っていうか今笑いましたね?俺の姿見て笑いましたね?」
「……笑ってない」
「絶対笑いましたよ!着ろって言ったの菖蒲先輩なのに!」

たくましい女装姿で佐助はうなだれた。

「見回りにいけなくて悪かった」
「それはいいんすけど、何があったんすか?!菖蒲先輩が時間に来ないっておかしいと思って電話したのに通じないし……。俺、菖蒲先輩がよそから来た人に拉致とか誘拐とかされたんじゃないかと思って……」
「考え過ぎだ」

眉を八の字にして鼻をすする佐助を未鷺は穏やかな声音で宥めた。

「何があったんすか?」
「おそらく軟禁された」
「えええ?!」

佐助が驚くのも気にせず、未鷺は眉を寄せて話し出した。

「山口に同行してケーキを振る舞われたところまでは覚えているが、気付けば施錠された体育倉庫の中だった。山口もいた。俺と山口の携帯は持ち出されていた」
「そんなことが……。風紀委員メーリス流してみんなで菖蒲先輩のこと探したんすけど、体育倉庫までは考えてませんでした」
「そのことは生徒会には伝えたか」

未鷺の中で、倉庫を出たときからの疑問が膨れ上がった。
なぜ靖幸が来たのか。

「いいえ、あんまり生徒会が役に立つとも思わなかったし、大事にしたらまずいと思ったんで、しばらくは風紀委員だけで探すことにしたんすよ」
「……竜ヶ崎が体育倉庫を開けた」
「会長が助けてくれたってことっすか?何で菖蒲先輩が軟禁されたの知ってたんすかね?」

未鷺も同じことを考えていた。

「竜ヶ崎が助けようとしたのは山口だろう。山口の行方を親衛隊に探らせたのかもしれない」
「でも会長って他の役員よりは山口先輩にはまってないように見えますよね。どっちかって言うと菖蒲先輩に……」

佐助は言いかけた口を閉じて苦笑した。

「何だ」
「何でもないっす。つーか菖蒲先輩ミスコン出たんすか!めちゃくちゃかわ……かっこいいっすよ!」
「成り行きだ」

話題を逸らされたのはわかったが、未鷺はあえて聞くのをやめた。

「他の風紀委員に謝りたい。携帯を貸してくれるか」
「いいっすよ。謝る必要はないと思いますけど、みんな安心するでしょうしね」

未鷺は佐助の携帯から風紀委員メーリスへ謝罪と簡単な経緯の説明のメールを送った。

そして風紀委員メーリングリストに登録されているアドレス全てにメールが届いた。

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