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元秋は結局屋外ステージ前に足を運んでいた。
ステージからはランウェイが伸びていて、それを囲むような席は有料なのにもかかわらず、全て埋まっていた。
元秋は缶のコーラを片手に、たったまま遠目で見ている。

ミスコン出場者は12名だという。
そこそこ可愛い生徒が趣向を凝らした衣装を纏い、愛嬌を振り撒きながら歩くのを見るのはそれなりに面白かった。

「エントリーナンバー9、羽藤みちる君!」

みちるの名前が呼ばれると、野太い声で歓声が上がった。
あいつ結構人気なんじゃねえか、と元秋は笑う。

登場したみちるはすがすがしい程狙いがはっきりしたメイド服姿だった。
元気に手を振って歩く姿に午前の弱った様子はない。
元秋を見つけたみちるは跳び跳ねながら手を振った。

元秋は苦笑してさっさと戻れ、と視線で訴える。
ちらっと舌を出してみちるはランウェイを戻って行った。

その後も数人が続き、元秋は歓声の量で客観的に見て、みちるはいいところまで行くのではないかと思った。

しかし、11番目の出場者で空気が一変した。

「エントリーナンバー11、千堂翼君」

翼のことを学園で知らない者はいない。
靖幸の親衛隊隊長で眉目秀麗な少年だ。
そしてミスコンの二年連続の覇者である。

肩を露にした花魁風の着物を身に纏い、気だるげな表情で静々と歩く彼は、愛嬌を振り撒く必要がなかった。
妖しい美しさを見せつけるようにして現れ、去って行く。

彼がステージ裏に消えた後も余韻が残っていた。

次は靖幸が呼んだという特別ゲストだが、元秋には誰だかわかっていた。
野原だ。
顔で言えば翼と同等かそれ以上だが、翼のような迫力があるとは思えなかった。

特に興味もなく、コーラを煽る。

「最後は特別にこの人!エントリーナンバー12、菖蒲未鷺君」

元秋はコーラを吹きそうになって口を押さえた。
この日一番の歓声の中、未鷺が登場する。

細身を純白のミニドレスに包んでふんわりとセットされた黒髪を揺らしながら、上品な所作で歩いて行く。

物憂げに伏せられていた目が元秋を捕らえると淡く光った。
神聖な物を見ている気持ちになり、元秋は目が逸らせなかった。
観客も惚けたように未鷺の動きを目で追っていた。

「これは、菖蒲さんが優勝だな」

元秋の近くにいた生徒が呟く。
それに同意しながら、ステージ裏に消えていく華奢な背中を見送って、元秋は胸中で毒づく。

人前で脚見せてんじゃねえ、馬鹿。

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あきゅろす。
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