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どきどき


野原は目覚めるとすごく楽しい気分だった。
知らない場所にいるのも気にならなかった。
少し暑いな、とは思ったが。

「未鷺……!」

壁にもたれるようにして眠る未鷺を見つけた。
狭い場所に自分と未鷺が二人きりだと気付いた。

今日の未鷺は婦警の姿で、艶めいていた。
今は更に、スカートがずり上がって白い太股が剥き出しになっている。

野原はごくりと息を飲んだ。

暑さのせいか緩められたネクタイや、ボタンが二個開いたシャツ、紅潮した頬など、全てが野原を誘っているようだった。

軽く閉じられた桜色の唇が、元秋のそれと重なっているのを見たことがある。

元秋は未鷺と友人だと言った。
野原も未鷺と親友だと思っている。

「俺も……」

野原は未鷺に近付く。
頬を撫でると未鷺の長い睫毛が震えた。

自分の今の気持ちが欲情と名付けられていることを知らない野原は、どきどきしながら未鷺に顔を近付ける。

「……何を、してる」

未鷺の瞼がぱちりと開いて、慌てて野原は顔を引き正座した。

「ううん!何も!」
「……俺は寝ていたのか」

頭を押さえて起き上がると、未鷺は状況が変わっていないのを確かめるように視線を巡らせ、最後に時計を見る。

「1時15分……」
「そういえば俺達何でこんなところにいるんだ?」

野原は今やっと自分達の状況を不思議に思った。
暑いし喉が渇いたので早くここを出たかった。

「俺は覚えていない。誰かに閉じ込められたのは確かだ」
「えっ?じゃあ出られないのか?」
「外から鍵がかかっている。外側から開けられるまで出られない」「誰がこんなことしたんだ!」

学園祭を楽しくまわる予定だったので、野原は苛々してきた。

「山口、携帯は」
「ポケットに……あれ?」

ポケットを探るが、何も入っていなかった。

「なくなってる!」
「俺の携帯もなくなっていた。寝ている間にとられたらしい」
「そんな……」
「外と連絡が取れないなら待つしかない。学園祭終了後の5時以降に備品を片付けに来る生徒が鍵を開けるはずだ」
「5時以降?!そんなに待てないよ!」

野原が声を張り上げると未鷺は僅かに眉を寄せた。

「待つしかない」
「なんで未鷺はそんなにのんびりしてんだよ!」
「慌てても何も変わらない」

未鷺があまりにも落ち着いているので野原は余計に焦ってしまう。

「あーあー、靖幸か慎一か空か陸か爽太でも、助けに来てくれないかなー」

未鷺は野原を一瞥すると壁に寄り掛かり、目をつぶった。

「未鷺寝んのか?もうちょっと話そうぜ」
「断る」

ぴしゃりと跳ね退けられた野原は恨みがましい目で未鷺を見ていたが、だんだんと自分も眠くなってきた。

早く誰か助けに来いよ、と呟きながら目を閉じた。

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