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脱出不可能


未鷺は暑さで目を覚ました。
暗い天井と背中に当たる固い感触は記憶になかった。

サッカーボールが入ったカゴ、カラーコーン、グローブ、バット……
自分の周りにあるそれらを見てここが体育倉庫であると気付く。
しかしなぜ自分がこんなところで寝ていたのかは全く見当がつかない。

「山口」

起き上がると頭痛がした。
倒れている野原に近付いて揺すぶると、「んー、もうちょっとー」と呑気な寝言を漏らした。

扉を引くが開かなかった。
外側から鍵がかけられているのだろう。
ポケットにはあったはずの携帯がなかった。

「閉じ込められたか」

未鷺は冷静に呟き、腕時計に視線を落とす。
午後12時45分。
見回りの当番にいかなくてはいけないのに、と思った。

体育倉庫の唯一の出入り口は鍵をかけられていて開きそうにない。
自力での脱出は不可能だ。

高い位置にある窓から日差しが入り込んで、倉庫内の気温を上げている。
暑さと喉の渇きで体力が奪われていく。

誰にも見られていないのはわかるが、未鷺はスカートを押さえて座った。
再び眠気に襲われ、眠りについていた。

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あきゅろす。
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