計画
萩野慎一と間口陸の親衛隊の一年生達は生徒会メンバーが山口野原と学園祭を過ごすのが納得出来なかった。
生徒会役員とその親衛隊長が共に過ごすべきだと思っているのだ。
そして彼らは山口野原を学園祭の間閉じ込めておこうと考えた。
『山口先輩に食べていただきたいものがあるんです。お一人で来てもらえますか?特に生徒会の方には内緒でお願いします』
そう誘ったら野原は簡単に頷いた。
学園祭では使われない西校舎の調理実習室で野原を待つ。
ジュースに度数の高いアルコールと少量の睡眠薬を混ぜておいた。
それを甘いケーキと一緒に出す。
ジュースを飲んで酔った野原を外の体育倉庫に閉じ込める計画だ。
約束の時間を過ぎたところで野原はやって来た。
「ようこそ、山口先輩……と未鷺様?!」
野原の後から未鷺が部屋に入って来たので、一年生達は混乱した。
計画は中止にするべきか、と。
「何か食べさせてくれるんだろ?」
「は、はい。今お持ちしますので少しお待ち下さい」
冷蔵庫に取りに行きながら、隊員達は相談する。
「諦めた方がいいかな」
「せっかく用意したのに」
「予備のケーキならあるよ」
「いっそ未鷺様も一緒に眠らせたら」
「二人共閉じ込めればいいんだよ」
慌てた隊員達は正常な判断力を失っていた。
アルコールと睡眠薬入りのジュースをもう一杯作って、ケーキと一緒に野原と未鷺の前に置く。
「なぜ山口に振る舞おうと思った」
未鷺に怪訝そうな瞳を向けられた隊員はどうにか口を開く。
「せ、生徒会の皆様にいつかケーキを差し上げたくて、皆様と仲が良い山口先輩に感想を聞きたいと思ったんです」
しどろもどろな答えだったが、未鷺はひとまず納得してくれたようだった。
隊員達は未鷺の唇がコップに触れるのを祈るような気持ちで見ていた。
その間にも野原は「うまいうまい」と言いながら上機嫌でケーキを食べている。
最初に変化が表れたのは未鷺の方だった。
目の周りが赤くなり、とろんとした表情になってきた。
野原は徐々によくわからないことを話し出した。
「もしかして未鷺様も酒に弱いのかな」
「そうかも」
隊員達がこそこそ話している間に、未鷺の手からフォークが落ちた。
目を閉じてしまっている。
野原も赤い顔で机に突っ伏していた。
「そろそろいいかな」
隊員達は二人の様子を確認して体格の良い生徒を電話で呼び出した。
調理実習室は一階で、外に出られるドアがある。
野原と未鷺は背負われて体育倉庫に運ばれた。
二人に抵抗する様子はない。
ポケットに入っているそれぞれの携帯を回収し、外から鍵を閉めれば完璧だ。
携帯は学生課の落とし物届けに出せば良い。
彼らの計画は呆気なく成功した。
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